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誉れ高いモンツィンガー

Nun rühmte die Gesellschaft von der Nahe einen in ihrer Gegend wachsenden Wein, den Monzinger genannt. Er soll sich leicht und angenehm wegtrinken, aber doch, ehe man sich's versieht, zu Kopfe steigen.

Johann Wolfgang von Goethe

ナーヘの社会は、それでその周辺に育つモンツィンガーと称するワインを賞賛した。そのワインは、軽く快適に飲み干せるものなのだ。それも酔いが頭に廻るまでにというのである。 

ヨハン・ヴォルフガンク・ゲーテ


第二回放送の公開プレヴューに招待された、TV六回シリーズの第一回放送を観る。ラインラントプファルツのワイン栽培地域を網羅する企画である。SWRマインツ制作のロカール番組である。

先ずは第一カットに先日訪問したシェーンレーバー醸造所の親仁と息子が登場する。トラクターが入れない急斜面での二人の仕事ぶりが映し出される。まさに骨折り労働である。そんな二人が態々日本からやって来るお客さんを迎えるために控えていたかと思うと気の毒で仕方ない。

しかし、彼の俗物ゲーテとて1815年のビンゲンのザンクト・ロッフス祭りにて、これを薦められたと記している。私も日本有数のリースリング通である緑家さんにこれを薦められて帰り道にほいほいと谷奥までついて行った。

そして、肝臓にとても良さそうな名前のこの醸造所のリースリングは、ここでも辛口の批評に曝される。しかし、あの仕事振りを見ると、「ご苦労様です」としかなにも言えなくなるのである。そして、番組は自ずと「ナーへの辛口リースリングの最高峰」である事を示し、その顧客名簿に載せて貰い、そのワインを自宅で改めて吟味すると、私もそれを疑わない。

番組ではその他、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンが四年間過ごした修道所のワイン地所でエコ農業に勤しむフォン・ラックニッツ夫婦や、ナーへ外れの本来ならば栽培地域プファルツに含まれるべきと思うビオヴァインを造るハーンミューレ醸造所のプフェルツァリンや、赤い崖の下の高温を活かすドクター・クリュイウスの立てないほどの崖で今も働く九十歳過ぎのお母さんや、醸造所辛口ワインを木樽でもステンレスでもなく親父から受け継いだ施設で単純に醸造するテッシ氏などに混じって、おかしな連中が続々と登場する。

ビンゲンに近い下流の場所で日本で有名なアイスヴァインに懸けるヘルマン・デンノッフ親仁などは、「この仕事は使用人には任せられない」と旧式の絞り樽で茎のままプレスして、そんな真っ黒の葡萄の絞り汁を飲みながら「完璧などとよく言うな」と思わせる。まるでナーへヴァインのその質の低さを印象づけるような光景である。そしてその最大の横綱は、ディール醸造所の親子であろう。

昨年の秋からの取材番組なので当時は評価本騒動がまだ起きてなかったのだろうが、TVで拝見する限り、然もありなんと思わせる人物像が映し出され、その跡継ぎである娘たるやピノブランに熱中するあまり、殆どその狂人振りが紹介される。

手摘みで集めてこられた葡萄が台の上に載せられて一粒づづより分けられる作業は、まるで日本の尋常ではない付加価値をつける農業張りで鬼気迫る。しかしそれだけでは終らない。この番組のハイライトは、ハイレグ水着でその葡萄の樽で行水する娘の姿である。

流石にカメラは、カットを考えて映し出していたが、「私の体の温もりが」とその太ももを膝の上深くまで潜らせる光景は殆どポルノかホラーですらある。余程のじいさんならばこれを見ていて彼女が浸かった赤ワインに舌包みを打ちたいと思うだろうが、それは変態に違いない。

今日は数週間振りに雨となった。フランス国境の木々は色合いが此方よりも濃いかったが、これでミッテルハールトも紅葉へと一挙に進むであろう。すると、葉に溜められていた養分は根や枝へと移動する。いよいよ摘み取りも渦中である。明日は、グランクリュワインのためにも風が吹いて早く乾いて貰いたい。

今晩は、シェーンレーバーのリースリングをアイフェル料理である酢豆煮込みと楽しむつもりである。



参照:
Weinland Pfalz (SWR3)
Monzingen (Aus dem sonnigen Bonnertal)
立ちはだかる一途な味覚 2009-09-27 | 試飲百景
甘い汁を吸い続けた報い 2009-08-03 | ワイン
by pfaelzerwein | 2009-10-06 00:20 | マスメディア批評 | Trackback
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