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十時には飲んで、金曜日の一日

朝九時半にダイデスハイムで待ち合わせた。いつもの様に駅前でお迎えである。しかし平日でフランクフルトからノイシュタットへの直行便があるので、週末より明らかに都合が良いようだ。

先ずは、フォンブール醸造所を訪ねる。今年はフライング気味に早めに行って、未だリッターリースリングしか購入していない。そこで、初めてグーツリースリングからモイズヘーレまで七種類の2009年産を一挙に試飲する。

先ず何よりも気がつくのは、2008年産と異なり、通常の開き方をしている事で、ヘアゴットザッカーよりもキーゼルベルクの方が早く出来上がっている。それでも2007年産のように特別に若い感じはなくて、どれも飲める程度に開いて来ている。グーツヴァインが8Gの残糖にアルコール11%しかない事がある意味特徴として表れているかもしれない。要するに開花時期のバラツキがこうした所に出ている反面、どれもこれも酸が肌理細かなので万人に奨められるリースリングとなっている。その典型が、砥石のようなミネラル質と強い酸でマニアックなモイズヘーレが「買える高級リースリング」となっている事で、今年からBIOワインに認定されているこの醸造所としては大成功だろう。

古い年度では、2008年産のウンゲホイヤーとペッヒシュタインの葡萄が混ざった収穫量を50hlまで落としているキュヴェーのF・Pブールも悪くはなかった。そしてウンゲホイヤーグランクリュが残糖感はあるものの既に飲めるようになっている。

急いで、次ぎのフォン・バッサーマン醸造所へと急行する。そこでは、改めて2008年と2009年産のキーゼルベルクを比較試飲して、ライタープファードの進展を確かめ、更に2007年産のホーヘンモルゲンを試飲する。やはり最後のグランクリュはステンレス熟成であろうがなんだろうが大したものである。2008年産のゴールトムスカテラーのアイスヴァインが2007年産よりも収穫量が少なくハーフサイズ瓶で六ユーロも高い事を知り、尚且つその酸の質から当然かと納得する。

さて次が本日のお目当てのゲオルク・モスバッハー醸造所である。土曜日が午前中しか開いていないのでなかなか落ち着いて試飲出来ないため、お客さんに態々平日にお越し頂いたのである。2009年産ではヴァッヘンハイマー・オルツヴァイン、ケーニクスヴィンゲルトそしてソヴィニオン・ブランを試飲する。特記しなければいけないのは、二つ目の地所で今年最初の発売となったリースリングである。一昨年までは、モーゼルのローゼンが貸借しているヴァッヘンハイムのL・ヴォルフ醸造所が所有していた地所で、昨年各醸造所に売り叩いた地所の一つである。出来は流石のもので、同じ葡萄から遜色の無いワインを造る腕は流石と感心させられた。以前は単体でまともな商品としては売られていなかったからだ。ローゼンが手を出しても、品質だけで無く商売上も決して良くならない好例であろう。

他にイエズイーテンガルテンも譲り受けたと言うから高級路線へと進んでいるこの醸造所としては大変エポックメーキングな獲得であろう。そこの葡萄は植え替えられたのでグランクリュが出来上がるのは数年掛かるだろう。それでも上のアップルフォート味などを見れば、新たな地所からのこの醸造所自慢の果実味溢れる新商品には期待を寄せずにはいられない。そのような立派さに2008年産のハーネンビュールやラインヘーヘがあり、双方とも高級リースリングとして立派に通じる商品である。

昼食を挟んだあと、今回試飲して購入に踏み切ったのが、一般的に獣臭さのエグミがある2007年産のシュペートブルグンダーで、カカオ風味などの味わいと深みを出させるのは流石というほかないのである。お婿さんの出身はピノノワールで有名なカイザースシュトュールである。

そして、とりにはビュルクリン・ヴォルフ醸造所で2008年産のウンゲホイヤーをはじめて試飲する。半分は天然酵母で醸造されたようで一昨年暮れには発酵が止まっていたようである。そのような理由で瓶詰めが大幅に遅れていた。なるほどまろやかさが、酸を包みこんでいるが、独特のミネラル成分が調和を放つ飲みごろになるにはまだまだ期間がかかりそうである。昨年の暮れに「驚くべき現象」を示していたカルクオーフェンも通常の新鮮なグランクリュに戻っており、五月に銀座で開かれるというワイン会に間違いないものを推薦するのは容易では無い。2005年のウンゲホイヤーもまだまだ角が取れておらず、このワインのミネラル成分の強さを改めて感じる。そこで奨められたのが意外な、2008年産のペッヒシュタインで、本来ならば長く寝かさなければ旨さが出ないこのワインが、その2008年の独特の酸の相俟って、新鮮さで十分に楽しめるのである。これには驚く。更に、2009年産は葡萄の状態が良い事から多くが天然酵母醸造となっていると聞いて、これまた五月の解禁が楽しみとなってきた。

四月の終わりに試飲会を開催する予定なので、是非ともその機会にはプリミエーとして2009年産を出して貰うように交渉しなければいけない。いずれにしても銀座で紹介して貰うリースリングとして、とれとれのケーニクスヴィンゲルトと、このペッヒシュタインは外せないだろう。



参照:
自転車操業中の聖週間のお慰み 2010-03-29 | 料理
今が素晴らしければそれで良い 2009-12-26 | ワイン
by pfaelzerwein | 2010-04-03 06:06 | 試飲百景 | Trackback
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