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原発廃止後のエネルギー貯蓄

昨日紹介した新聞記事は、三月二十二日のテクニック欄で掲載されたものだった。そこでは、第三世代のウェスティングハウス社の沸騰水型SWR1000や停止後の冷却の必要の無い圧力型AP1000における商品検査は唯の「良し」もしくは「優良」扱いにしかなっていないと言うのである。圧力抜きなどを備えた仏アレヴァとジーメンスによって共同開発された新システムは、大事故を防げないとした前提で「漏れない」に重点を置いて、セラミックのプールの上に格納炉を設置して何メートルもあるコンクリートで包むことで放射能も吸収して外部へと出さないように設計されている。また四重の緊急冷却システムを内外からの影響を受けないように別棟に設置してあり、洗浄システム自体が内圧を押さえる機能を果していて、EPRと呼ばれるこのシステムは2009年からフィンランドでまた北フランスで動いており、更に二つが中国で操業となる予定となっていた。

上の記事から二週間ほど経って、2020年までには原発を全廃する方向へとドイツ連邦共和国も動いている。さて、再生可能エネルギーで電力需要を十分に賄えるかの疑問点とその問題点を今度は科学欄で扱っている。その時の風力エネルギーの割合は、連邦環境省によると共和国内消費全体の15%、2030年までに26%になると言うことである。2050年において全再生可能エネルギーの比率を供給量の80%へと拡大することを予定している。

さて連邦共和国の現状は、再生可能エネルギーの割合は僅か17%であり、その中で最も有力な風力は6%あまりである。しかし、それに比べて今後ともあまり期待出来ないのが太陽熱エネルギーで1%を賄えるかどうかというのである。その他は地熱エネルギーやバイオエネルギーとなる。

日本やスペイン南部、アフリカの沙漠と違って、ドイツでの太陽エネルギーの獲得は年間を通して困難ということで、ここで北海の風力発電計画などと共通した脱原発への技術的な問題点と可能性が考察される。世界の自動車産業や電気メーカーの開発部門が躍起となって取り組んでいるのが季節によって発電され過ぎて、天候によっても左右される電気の蓄電の問題であるのは周知の事象である。当然のことながら、北アフリカからのロスの少ない直流による高圧電力の輸送のネット化の問題もある。それでも連邦共和国内の需要の10%以下しかサハラ砂漠から供給出来ないであろうと試算されている。要するに発電から家庭電化までを網羅する有効な電気利用としてのスマートグリット構想の完成が必要で、これは数年内に完成すると見做されている。しかし、重要となる蓄電については、自動車産業だけを観ていても解かるのだが本格的な実用はまだ始った所である。

その中でも最も重要視されているのが水素の利用であり水の電気分解、もしくは二酸化炭素からメタノールなどもしくは炭化水素類を、また窒素からアンモニを生成することにある。水素は環境に影響を与えず、炭化水素として輸送に優れているだけでなく、燃料としてまた発電への二次的な原料としてもしくは化学産業での原料として使えるので多様性とその価値は極めて高いと考えられる。

しかし長期に渡る研究にも拘らず未だに目標とする60%の水の電気分解率と至っていないことで、実際には20から25%に留まっていると言う。電気分解のために水の過酸化には触媒が必要とされて、不必要な精製品を生じないその理想とされる触媒は特に大量生産を考えると高価で貴重な鉱物などは使えないと、マックスプランクの化学的変換の為の研究所に移行するミュールハイムのシュレーゲル所長は語る。

そのような状況を総括すると数え切れないほどの風車と広大な地域での太陽熱発電やポンピングによる水力発電施設(揚水発電)やネットワークだけでなく、数多くの蓄電施設は近代的な化学工場のような大きさが必要となるということである。電気を何時までも環境に与えないように使うにはそれしかないと言うのである。



参照:
Zwischenlager für Wind- und Sonnenstrom, Manfred Lindinger, FAZ vom 6.4.2011,
Automatisch sicher, Georg Küffner, FAZ vom 22.3.2011
by pfaelzerwein | 2011-04-10 21:59 | テクニック | Trackback
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