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歴史的毛皮の争奪戦

ゲルハルト・リヒターの八十歳の誕生日の記事の裏にデューラーの「毛皮のポートレート」の興味深い記事が載っていた。五月から画家の故郷であるニュルンベルクで始まる大展覧会に、この話題の絵をミュンヘンのアルテピナコテークから貸し出ししようとしたところ、門外不出の作品リストに載っているとして断られたと言うのである。

それを巡って、フランケンとバイエルンの両地方で政治的な鬩ぎ合いとなっていて、両方の美術館を管理しているバイエルンの役所は同じでも混沌を極めた泥仕合となっているというのである。挙句の果ては1971年に特別に貸し出した際に色落ちや痛みなどが確認されてそれを断りの理由として挙げてきたと言うのである。

そこでこの「毛皮のポートレート」に纏わる興味深い歴史が紹介されている。そもそも態々1500と書かれている創作年度自体が誤りで、氏によって画家が市民貴族として認められてのは1509年以降のことであり、1500年当時はこの毛皮が意味するその地位についていなかったのである。その後、この作品は市に寄贈されたのか1577年にはオランダの美術理論家カレル・ファン・マンダーによって市役所で目撃されていて、18世紀にも市会議所の財産目録に存在している。

そしてナポレオン時にフランスに攻められた市は、1800年に複製を作らせていて、フランスはルーヴルへと移送を求めたが、それに対してその複製を引き渡している。そして、1806年にはバイエルン王国はその複製を依頼された銅細工師ヴォルフガンク・クフナーから僅かの金子でこれを入手している。それ以外にも30年戦争などの機会を通して「四人のアポステル」などをニュルンベルクからせしめていることから、今回の騒動は歴史的な背景がそこにあるといわれているのである。

先日最後の2010年産キーゼルベルクを開けた。昨年の春の印象よりは熟れた感じであったが基本的には生一本でありながら独特の砂のようなミネラル風味と鋭い酸は相変わらずで、2010年産の強い特徴を感じると共に流石の出来上がりを確かめた。好き好きはあっても、このバッサーマンヨルダン醸造所の辛口リースリングはプファルツをドイツの辛口を代表するものには間違いない。

2011年年産のルッパーツベルクのオルツヴァインを試した。同じブリュクリン・ヴォルフ醸造所のオルツヴァインであるヴァッヘンハイムのそれよりも瓶詰めまでの時間があったためかはじめからバランスが良かったが、酸が弱いと言われているルッパーツブルクと2011年で驚くほどの酸であった。その質は若干2010年に近い面もあって激しい酸である。その分、重めの土壌のルッパーツブルクのワインとしては成功しているが、薄っぺらい感のあるヴァッヘンハイムの方が果実風味も豊かでありながらミネラルの複雑感があって優れている。

最初に飲んだ頃から比較すると驚くべき成長を遂げている2011年産ヴァッヘンハイマーリースリングである。今年は何の怪訝も無くこの辛口リースリングを旅行に持ち込んで皆に楽しんで貰える。



参照:
Dürers Pelz - ein Stück Beutekunst?, Andreas Kilb, FAZ vom 9.2.2012
アトリエのアルブレヒト・デューラー/Albrecht Duerer in Gehaeus 2005-01-10 | 文化一般
著作権の換金と集金 2005-08-07 | 文化一般
馭者のようにほくそ笑む 2007-10-22 | 文化一般
肉体に意識を与えるとは 2007-12-16 | マスメディア批評
モデュール構成の二百年 2008-01-19 | 文化一般
知的批判無くては何も無し 2010-07-02 | マスメディア批評
by pfaelzerwein | 2012-02-12 00:46 | 文化一般 | Trackback
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