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ポストプライヴァシーの良識

海賊党の大会が週末に無事終わったようだ。注目されていた代表選挙には、反極右を明確に掲げた41歳のベルント・シュレーマーが選ばれた。それはなにもイデオロギーとしての方向を示すものではなくて社会学的な見地からも興味深い現象かもしれない。

問題となった26歳の前任者ネルツのボトムアップからの大船に乗るような優柔不断の態度は、勿論カテリーナ女帝を手本とするメルケル首相の為政者の立場ならば政治力学の物理学的考慮として十分に力を発揮するのだが、なんら党是も決まらないような2009年に二千人から一万人へと拡大してそして今回は三万人へと党員規模の拡大した政治的影響力のある公党としては受け入れられるものではなかったであろう。

それでも党大会に訪れた僅か1500人の党員は同じ権利で同じように演説してその旨を党員に問う直接民主制をなんら混乱なく遂行したのは前回のビンゲンの大会における混乱とは一線を隔していたようである。アウシュヴィッツ修正主義者の立候補には明確にレッドカードが掲げられてと、ある意味連邦共和国の戦後教育の成果がそこに表れているとしても良いかもしれない。

しかし、そうだろうか?なるほど反国家主義教育は教育の根幹であったかもしれないが、反ユダヤ主義や外国人排斥も必ずしもタブーではなくなってから大分経っている。むしろ一昨年の連邦銀行副総裁の書籍がベストセラーとなったようにそうした考え方に確かな根拠や言い分が存在することを多くが認めており、完全にそうしたタブーから開放されている。

それゆえに、こうしたヴァーチァル世代の良識をそこに見出せるのではないだろう。恐らくそれはネットの威力であり、なにも自国やEUからの視点だけでなく全方位な視野を居ながらにして見せてくれるヴァーチァルの利点でもあろう。

専門店の政党であるべきか百貨店へと進むべきかの議論もあったようだが、それ以上に既成政党とは違う政党を堅持することで、こうした一般良識を政治へと反映させる政治結社としての価値が生じる可能性もあるのではなかろうか?要するに政治は、一般良識では御せない政治力学の中でのプロフェッショナルな領域と見做されてきたが、メルケル首相ではないがネットのオピニオンを上手に吸い上げて纏めていくことで直接民主主義に近い政治も出来るかもしれないという希望も生まれる。

ポスト・プライヴァシーもしくはスパッケリア政治つまりプライヴァシー無き社会を目指した社会作りは決して過半数の支持を得ないとする考え方がある。所謂ヌーディズム運動とこれを置き換えれば分りやすいのであるが、ヌーディズムの醍醐味の開放感と平等意識はその反対の所有やその隠蔽への誘惑と相反するものであり、なんら隠し事がないことへの開放感は隠し事をすることが前提となっている。ゆえに主従を考えれば過半数とはならないということなのだろう。これは同性愛運動が過半数を超えることがないのと同じであろう。

その一方で、シュレーマー新代表は外交政策として国際的な海賊党のネット作りなどを考えているようで、政治結社として各地で定着すれば、所謂無党派層という大きな割合を海賊党が世界中で占めるようになるかもしれない。要するに一般社会市民の良識の党なのである。環境なんて専門家のものでアルゴリズムのように抽象的なものだとする一般良識とは、既成の構造や観念を打ち破るスパッケリア結社となるのだろう。



参照:
Schlömer neuer Vorsitzender der Piratenpartei,
Angebot zum Andersein,
Strurktur statt Spielerei, Marie Katharina Wagner,
Der aufhaltsame Aufstieg einer Partei, FAZ vom 30.4.2012
Wahlkampf einer digitalen Seele, Melanie Mühl, FAZ vom 27.4.2012
降臨の気配に天国作戦 2007-12-29 | 雑感
立ち入り放題のユートピア 2005-04-22 | アウトドーア・環境
民主性が問われる勃興政党 2012-04-24 | マスメディア批評
海賊党が問題提議したもの 2012-04-22 | 文化一般
by pfaelzerwein | 2012-04-30 23:43 | 文学・思想 | Trackback
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