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ゲーテには難しい青粘板岩

インサイダー情報を堪能した。そもそもナーヘのシェーンレーバー醸造所におなじみのワインをバッサーマン・ヨルダン醸造所に運んで貰うこと自体が、既にインサイダーであるが、見かけたところ数件の同じような顧客が居たようだ。

先ずは「ハーモニーの年度」と自らが呼ぶシェーンレーバーを試す前に、友人の元の大家さん夫婦に出会って、先週の試飲会に現地へと出向いたと聞いた。これまた熱心な愛好家と思って、話をしていると奥さんがモンツィンゲンの隣町の出身で、不耕地になるワインの地所をシェンレーバーに貸し付けたと聞いた。

南向きの斜面でその土壌は分らないが、シェンレーバーは一年間掛けて自分の苗を植えつけて様子を見ての判断だったというのである。流石に一流のワイン造りをする醸造所だけの商売上手である。無事契約が成立して、そこの葡萄が今後はなにかに使われるのだろう。上流の山間であるから量産ものにはならないだろう。

さて、息子さんに挨拶して、「レンツ」から試飲を始める。残糖を感じさせる造りで、その名前からもこの醸造所の代表的フリューリングスプレッツヘンにも似ているが、様々な土壌からのキュヴェーであるという。しかし、実質的には赤スレートが崩れたような土壌の平地部分も含まれているようだ。基本的にはオルツリースリングである。

それを明確にしているのが「ミネラル」と呼ばれるテロワール商品である。これまた酸が隠されていて前者以上に弱い感じがするが、その反面塩味が出ていて、残糖の加減だけであることが分る。個人的には糖がもう少し少なければとても素晴らしいと思うが、スレートの旨さと甘み感はもちつもたれつなので判断が難しい。

さて、次は赤スレートの代表格であるフリューリングスプレッツヘンである。基本的にはロートリーゲンデスもおなじであるが、味の輪郭が暈けた感じはまさしく春暈けの様相で、リースリング愛好家には物足りない。更に引っかかり感があるのは、レープホルツ醸造所のカスタニエンブッシュとも似ているだろう。しかし、2008年産を訪問して試した印象と、レープホルツの毎年の印象を比較すると、酸の質が一寸荒くて酢酸臭さが残念である。やはり2011年の腐りと酸の分解との葛藤にこの結果があるのだろう。

その意味からも先のシェーンレーバーの大家さんにもレーブホルツを薦めたのだが、全く酸が強くて駄目だと言うのである。酸が強いのではなくて糖を落としてあるだけなのだがそうした印象を齎すのと同じように、糖が多いと酸が弱い感じも齎す。要はバランスなのである。

唯一のオールドヴィンテージは2008年ハレンベルクRである。あの時も試飲して最も印象に残ったワインであった。クリーミーに熟成して、酸が引っ込んだとても品が良い薬草酒のようなとても素晴らしいリースリングとなっていた。青スレートでは、グリュンハウス醸造所のアプツベルクや同じルーヴァーのカルトホイザー醸造所のそれを思い起こすが、こうした比較的月並みの土壌から素晴らしい辛口リースリングは意外に少ない。その中でこのハレンベルクは明らかに秀でている。ストュルクチャーも明晰で、なによりもルーヴァーのものと違って格がある。その醸造法については秋にでも訪問の節にでも調査してみたいが、この出来上がりから恥じるべきところは微塵も無いであろう。

あれから三年弱、瓶詰め後二年を越えた2008年ハレンベルク、この醸造所の実力を端的に示した瓶熟のリースリングである。若干酸が引っ込んだ感じとなっていて重みがあるが、ルーヴァーの軽みの2007年アブツべルクの極痩せ感と比較すると、とてもボディー感がある。2008年産のアプツベルクスペリオールぐらいとの比較が適当であろう。

甘口が二種類、単純なカビネットとフリューリングスプレッツヘン・シュペートレーゼ、どちらも凡庸であった。2008年産などの良い年のバッサーマン・ヨルダンより良いわけではない。やはりこの醸造所は辛口の醸造所である。

同じナーヘのデ-ンホフ醸造所が甘口で屈指であると同時に辛口でも良いものを造ると頻繁に聞く。想像であるが、デーンホフの方が俗受けするスレート味の辛口を出しているのだろう。

大俗物ゲーテが飲んだで感動したのは赤スレートのモンティンガーに違いないと考える。(続く



参照:
誉れ高いモンツィンガー 2009-10-06 | マスメディア批評
立ちはだかる一途な味覚 2009-09-27 | 試飲百景
政治への強硬な姿勢 2012-05-10 | ワイン
真直ぐに焼け焦げた軌道 2009-09-29 | 試飲百景
by pfaelzerwein | 2012-05-14 20:16 | 試飲百景 | Trackback
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