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完全に終わったその伝統

バッサーマンヨルダン醸造所に今年初めて出かけた。2002年産は昨年の暮れに試しているので知っているが、グランクリュワインの前予約締め切りの前に試したかったからである。

結論からすると、未だにこの醸造所のワインを購入したり愛飲している人は、ワインを知らない、その名前の歴史のイメージしかない人だろう。もはや、家紋もなくなったエチケットのワインから一流のものは輩出されることがないだろう。ドイツワインのリースリングのひとつの歴史は既に途絶えた。とても悲しいことであるが現実を直視しよう。

グーツリースリングからヘアゴットザッカー、キーゼルベルク、モイスヘーレー、アウフデアマウワーなどを試したが、最後のものを除いてはステンレスの安物ワインで、同じ価格のフォンブール醸造所のものの方がはるかにテロワーも出ていていて丁寧なつくりで、もはや勝負にならない。

その中で、キーゼルベルクだけはこちらのものが素晴らしかったはずであるが、なるほどそれらしい味筋に仕上げてきているだけで、つくりは安物になってしまっている ― 価格のみは厚かましくも上昇している。他のものもモスバッハー醸造所のそれの方が手が掛かっていてよい。

最後のものも購入して食事にもあわせてみたが、なるほど下位のものに比べると旨みもあり、恐らく絞り汁に出るニガニガ感も薄いのは、選定をして木樽を使っているかだろうか、それでも天然酵母のそれではなくて培養酵母のお決まりの味筋に仕上げているだけで、17ユーロは不当な価格である。

同じ価格帯ならばどれだけ素晴らしいリースリングが各醸造所にはあり、瓶熟成を待つのもよい、飲みやすさを競ってもよしで、ご進物には事欠かない価格帯である。それがこの程度のワインでお茶を濁しているのは尋常ではない。

二十年ほど顔馴染みの従業員たちの仕事振りや表情からも完全に終わっていることを感じた。この調子ならそのワインの地所もだんだんと手が入らなくなって、売りや貸借で、安物ワインの代表になる可能性もある。もはやVDPの下位のグループに入ってしまった。価格だけは高級であるから名称詐偽である。



参照:
大動揺する名門醸造所 2013-07-27 | ワイン
リースリング・ヌーヴォーの夜 2012-12-09 | 試飲百景
by pfaelzerwein | 2013-08-19 21:35 | 試飲百景 | Trackback
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