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寂しき春の想いなど

日本のニュースを見ていると、スイスのシンドラー社が撤退するとあった。またも日本から優秀な欧州の有名企業が撤退するのかと思った。その背景には、死亡事故などもあるのだろうが、要するにスイス製やドイツ製の高級な工業製品などは日本市場が縮小する中であまり魅力的な市場ではなくなってきているということでしかないだろう。日本を撤退してシナに集中すれば事足りるのだ。先日も新しいスイスの建造物にシンドラー社の先端的な装置が話題になっていた。こうしたものは二度と日本では紹介されないということだろう。

パナマペーパーの事を書き忘れていた。パナマにタックスヘーヴンを求めて世界中の実力者が開いた口座の数々である。史上最大のリークであり、公表に尽力した世界のジャーナリストの勝利と呼ばれている。そのなかにはサッカーのメッシ選手やスイスのサッカー協会関係者の名前が並ぶ。そして世界中の政治家の名前がペーパーカムパニーを使っているとして挙がる。その筆頭は、プーティン大統領であり、政敵で戦争をしているポルシェンコ大統領だ。習国家主席の義理の弟がそこに含まれているので、この口座自体は違法とは言い切れなくとも政治的な影響は大きいといわれる。プーティンのチェリストというのが口座の持ち主であるが、名も無い演奏家がビリオンの財産をもっていること自体がおかしいと言われる。その額面になると、歌手のネブレスコや指揮者のゲルギーエフなどの名義を使ってもやはり不自然だ。

日曜日の録音を流していて第2楽章「秋に寂しき者」のあとで話し声が聞こえていたので、てっきり歌手が舞台上で何かを訴えていたものだと思った。ミュンヘンでの上演のバリトンとは違ってここでメゾソプラノを歌っているのはエリザベス・クールマンという先頃亡くなったアーノンクール指揮で歌っていた人らしい。とても貴重なメゾで、四楽章も恐らくクリスティアン・ゲルハーヘルよりも成功していたのではなかろうか。その歌手が一体何を溢しているのかと興味を持ってじっくり聞くと、なんと携帯電話が交通情報を伝えていた。あり得ないことである。一曲目のアインザッツにも事故があり、ここでも楽章間に携帯が鳴る。それもマイクロフォンの捉え方から舞台上で鳴っているとしか思えない。

犯人はヴィーナーフィルハーモニカーのチェリストか?ブラッチストだろうか。昔から余興仕事ゆえにか不真面目な管弦楽団というのは有名でフルトヴェングラーなども溢していたが ― この指揮者は楽師さんが笑っていると笑うなといつも叱っていた ―、もしこれが事実とするとやはりとんでもない。故ベーム博士も厳しかったようだが、先ごろ亡くなったピエール・ブレーズもSWF放送管弦楽団の何度も弾けない一人の楽員に対して、「そのようなことで、このレベルの楽団にいて、職業人として恥ずかしくないですか」と公然と叱ったらしい。

それにしてもよいところでクシャミもするようなことでは、楽友協会でのニコライコンサートなんてこんな程度かと思ってしまう。ネットには、キリル・ペトレンコはあまりヴィーンでは振ってくれないと嘆いていたが、マネージメント事務所がヴィーンにあってもベルリンから十年以上も遅れてそこでデビューすることになった背景のようなものをそこに感じる。ヴィーンでのオペラ指揮の方の録音などを探しているのだがネットではなかなか見つからない。察するところこの公の発言の少ない小柄な指揮者に嫌われると相手にして貰えなくなるような感じでこれも怖い ― 「皆がこの指揮者を失望させたくないと一生懸命に練習をする」と言うことだが、裏を返すととても恐れられる先生なのだろう。

ここの歌劇場の方も次から次へとある程度知名度のある人が次から次へと振っていて、他の劇場が若手を育てていくのとは大分雰囲気が違う。世界からの観光客に満足して貰うための方便であろうが、確りした監督が居ないと技術的だけでなく音楽芸術的にある水準を維持するのはとても難しそうである。

ミュンヘンでのコンサートの批評は、メンデルスゾーンでの終楽章の驚く様な急なテムポアップに座付管弦楽団が付いて行ったことに驚愕して、これこそ限界領域だと称賛していたが、なるほどそこに書かれているように音楽監督も楽団も同僚としてお互いに知りあっているからこそ限界領域が開かれるとするのは正しいだろう。



参照:
起き得ることなのだろうか? 2016-04-05 | 雑感
徐々に遠くなる二十世紀 2008-08-26 | 音
アンチのイデオロギー化 2006-10-04 | 音
by pfaelzerwein | 2016-04-05 23:28 | 雑感 | Trackback
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