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音楽体験の機会を奪う動画

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MPC-BEと称する動画プレーヤーを使い始めた。WASAPIモードというウィンドーズのミキシングをバイパスするための設定が可能で、高音質再生が得られるプレーヤーである。USB-DACには欠かせない。勿論フーバー2000で開けない音声ファイル以外のものに使う。

予想外だったのはDVDを開くと本来のプログラムメニューが表れて、ドルビーサラウンドとPCMを選択することが出来たことだ。DVDは何枚か購入しているが、DVDプレ―ヤーというものを知らないのでPCで適当に開いてきていたから、今まで気がつかなかった音声の選択である。バイロイト音楽祭での1980年の録音だからデジタルのようだが、こうして改めて聞いてみる ― ノートブックの読み取りよりもDVDプレーヤーで読み取った方が良いのだろうが。このDVDの録音の特徴は、サムプリングレート48kHzを出していても現在のハイビット処理とは異なる16BitPCM録音がマスターに違いない。これに比較して2015年の生放送「指輪」の録音を流すと、明らかに後者ではハイレゾリューションエアーチェックを成功させていることを確信した。実際に現在のネット環境を計測してみると、下り2.64Mbit/sで20年前に使っていた有線のサテライトラディオ放送DSRの倍の速度である。計算上24Bit48kHz転送が全く問題ない。序にネット速度測定サイトの一つを紹介する。ここで測ると、ダウンロード速度、アップロード速度が其々2.96 Mb/s、0.38 Mb/sと出た。

ブーレーズ指揮の「世紀の指輪」の演奏は、確かに精緻な印象派風の響きも出していてとてもフランス風で美しいが、こうして良い条件で聴いても2013年からのペトレンコ指揮の響きのように革新的なことはなかったのが再確認された。我ながら遅ればせながら四部作全部を生録音成功したのは天晴だったと思った。

そこでベルリナーフィルハーモニカ―のコンサートホールの無料のものを流してみる。録音は48kHz24BitのPCM録音で、AACとして出されている。つまり、CD基準に至るかどうかは転送速度による。動画はネット環境によって水準を選べれるが、なかなか最高速での再生は難しい。印象からすると音声も最高速でないと十分にハイレゾリューション再生は敵わないようだ。「Sehr hoch」で2.5MBit/sとなっているから、それが限界でさらに上の最高速では実際に再生不可能だ。しかし画像に多くのキャパシティーがとられているのを忘れてはいけない。

紛らわしいのは、昨年のべ-ト―ヴェン全集のようにハイレゾリューション録音DLもネット販売しているので、あたかもネット動画で容易にCD以上の音声が得られると勘違いされていることではないか?基本的にはピュア―ブルーレイメディアかFLACかWAVをダウンロードしないことにはハイレゾリューションの録音は得られないことになっている。要するに最高速が出ても動画の音質は精々CD基準に届くかどうかの程度である。

技術的な問題だけでなくて制作上の問題とか動画には超えられない問題が存在する。そもそもこの程度の音響では音楽の本質的な響きは再生されない。なるほど音楽劇とかオペラとかの場合は映像は貴重であるが、それだけその種の音楽は充分な音楽体験とはならないということでもある。

この機会に現在のデジタル技術での音楽再生の可能性を探ってみた。簡単に結論すると、舞台上映音楽においてもたとえ劇場の隣近所の観客が落ち着かなくても、生の体験は最も容易に音楽体験に結びつくというものである。エンターティメントとしてこうした動画を販売していたりすると、やはりその市場のみどころか、音楽体験の機会やそこでの覚醒の可能性を奪うだけで、芸術音楽の振興には繋がらないということに過ぎない。



参照:
トスリンクケーブルの差? 2016-06-15 | テクニック
幾つあっても邪魔にならない 2016-06-07 | 生活
by pfaelzerwein | 2016-06-18 20:49 | | Trackback
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