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原典回帰というような古典

ルター教会が開催中のフランクフルトの見本市で新しい聖書を発表したということだ。変更は僅かなようだが、これからはルター教会の聖書はこれに定められるという。原典回帰というような主張がこのような古典文化ではいつでも学術的な成果であるようだ。

古典といえば、十月初めにベルリンのフィルハーモニーで行われた調印式に伴う会見で次期音楽監督キリル・ペトレンコは質問に答えて、意識する先人としてハンス・フォン・ビューローの名を挙げて、その継承するものを示唆した。この会見に関しての情報は出ていたが、改めて動画で見ると興味深かった ― 先の欧州ツアーの最終映像もアップされていて、ヴィーンでの映像など初めての部分もある。そして次のプレス会見は2019年春ということで、「時間の無駄」のインタヴューは今後とも受け付けないと言明。

フォン・ビュローが出てくるのは、マイニンゲンとミュンヘンでの仕事のキャリアが重なることもあるだろうが、ヴァークナー研究に関して、その指揮実践だけでなく創作過程に深く係わって来た人物であり、「マイスタージンガーのベックメッサー」以上の存在感が公私ともに創作の中にあった人物に違いない。改めてここで強調された「作曲家への奉仕が最優先される」演奏実践の中で、この自意識の高い楽師集団をどのように創造的な演奏集団へと導いていけるか。そこで、古典的ピアノをクララ・シューマンに習い、妻となるコジマの父親フランツ・リストにも手ほどきを受け、メンデルスゾーンと知り合い、ヴァークナーの楽劇の初演やマーラーの交響曲に助言しているこのドイツ音楽を代表する演奏家の名前はとても自然に聞こえる。

バイエルン放送局のレポートによれば楽師個々人の能力を発揮させるような指導、演奏方針となるようだが、指揮者チェリビダッケ式の楽員への要求ではないが、逆に創造的な音楽が柔軟に出来ない楽員は徐々に去っていくことになるのだろう。ロシア音楽をアクセントとして、どのようなプログラムが用意されているかは営業秘密と誤魔化しつつも、三年も先のことであり常任指揮者としても得手不得手があるので、客演指揮者とは全く違っても、その領域を定めつつ、これから検討していくということだ。本人も認めるようにこの楽団への客演の経験も少ないので見極めもまだこれからのことになるのだろう。

ミュンヘンでは、前任となるサイモン・ラトルの訪問を受けて、有用な有難いアドヴァイスを受けたということで、その内容は口外出来ないとしながら、楽団との良好な関係の築き方についての話になったことを示唆したのだろう。青少年のための活動も継承しながら自身も係わると明言したのもt注目される。

同時にお披露目となった北ドイツ放送局管弦楽団の女性現支配人は、補佐として適任者のようで、芸術的に創造的な活動をマーネージメントとして経済的にも組織的にもしっかりと支えることが期待される。新音楽監督に期待されるのは管弦楽芸術の未来を担うことでしかないので現実的な舵取りがとても重要になる。

我々にとっても最も興味深いのは、最初から宣言されていたように「今後はオペラを指揮することなくコンサート活動に専念する」ことの確認である。つまりミュンヘンとの契約が終わる2021年までに幾つの新制作があるのみである。今までの新レパートリーの六つと計画の二つのオペラ、その他幾つかのレパートリー再演以外に、今後六つぐらいの新演出にバーデン・バーデンでのオペラのみということになる。

バーデン・バーデンでの上演に関しても述べて、模範的なオペラ上演をしたいということなのでまさしくスーパーオペラとなるのだろう。益々期待が高まる。既に2018年の制作やプログラムや配役などが手配されている筈である。



参照:
声楽付き楽劇「トリスタン」 2016-03-22 | 音
交響詩「彼岸の入り」 2006-10-05 | 音
インタヴュー、時間の無駄一 2016-07-20 | 文化一般
by pfaelzerwein | 2016-10-19 23:00 | 文化一般 | Trackback
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