人気ブログランキング | 話題のタグを見る

愈々初日のタンホイザー

承前)バレンボイム指揮の2014年ベルリン制作「タンホイザー」を最後まで観た。楽譜はパリ版のように始まり、結局はドレスデン版の演奏であった。ゼンガークリーグでパリ版に直された部分があったが、古臭いロマンティッシュオパーのレチタティーヴが異様で、それに合わせるかのように三幕のテムポを落としていて長いヴォルフラムとタンホイザーの歌唱が続き、眠気を誘う。

なるほど歌手陣も管弦楽団も立派であるが、指揮者の設定したテムポなどは、この指揮者の常とは言いながら、美しさの反面角が落ちてしまっていてネオロマンティズムのようなものを感じさせてあまり愉快ではない。ザイフェルトの歌唱は、二幕ではまるでトラムプヘアースタイルになっていて馬鹿にしか見えないのだが、三幕では落ちぶれた姿で歌を聞かせる ― 演出の力が大きい。ヴォルフラムの声が威圧的過ぎて、まるでバスのように響く。合唱団がなぜ今一つ上手くないのかは不思議だった。

そのような版でもパリ版のヴィーナスの丘を入れていて、邪魔になるバレーがまるでピーター・セラーズの手の動きなものをひっきりなしにしているようで、バイロイトのカストルフ演出以上に邪魔になる。古典の新たな再生のような演出意図なのかもしれないが、モーツァルトなどのオペラのように扱うのは間違っている。そもそもこの版でこの曲を聴くとどうしても後年の作品群の習作のようにしか聞こえない。

いよいよパリ版にヴァルターの歌などが追加されたような版が楽しみになって来た。一方、ミュンヘンのヴィデオの続きがアップロードされていて、演出に関しては益々分からなくなってきた。演出家カステロッチがおかしなことを語りだしているからである。肉を描くとなるとどうなるのか、それも皮と中身の違いとなると触感が無くなることになる。よっぽど無機的な演出をしようというのだろうか?可成り危ない。(続く)



参照:
「タンホイザー」パリ版をみる 2017-04-27 | 音
様々なお知らせが入る 2017-05-13 | 文化一般
阿呆のギャグを深読みする阿呆 2014-08-04 | 音
RICHARD WAGNER: "TANNHÄUSER" (BR-KLASSIK)
by pfaelzerwein | 2017-05-21 01:28 | | Trackback
<< 異次元の大ヴィーナス像 2015年産のお見事な出来 >>