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ワイン祭り初日を終えて

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昨晩、ワイン祭り初日は何とかなった。涼しかったからだ。それに出だしの18時半前には雷雨があった。その後晴れ渡って、本格的な人込みとなり、音楽も騒がしかったが、窓を閉めることが出来たので、零時前には深い眠りについた。朝も気分良く起きれた。空気の涼しい森の中を一走りしてから戻ってくると、ご近所さんが確りした身なりで明るい顔をしていた。九十歳の中半を過ぎているような爺さんであるが、久しぶりに元気そうで、車から出て話しかけるのを待っていた。

「よく眠れました?」と尋ねると、嬉しそうに「驚くほど眠れた」と答えるのだ。そうこう話ししていると、爺さんが私が走る森の中に「山小屋」を持っていることを思い出した。そこで就寝して、「朝飯も自分でやった」と普段はしない健康な生活をしたので身体が確りしてきたようだ。年寄りであるから、反動も怖いが普段のマンネリした生活から一寸でも変わると血圧も上昇するのだろうか。今日の様子や表情を観ていると百歳超えてもおかしくはないと思った。

やはり平均寿命が延びていることをこの爺さんを観ていると感じる。自転車を乗り回していたのは二十年程前であるから、八十歳ぐらいまでは運動能力の点でも問題はなかった。杖を突くようになったのがこの十年で、心臓の不調で救急車を呼んで介護の食事サーヴィスなどを頼むようになったのはこの数年のことである。今回はワイン祭りの喧騒を逃れての山小屋への一時避難であったが、やはり誰も居ないところで行き倒れにでもなったらいけないとの気持ちの張りだろうか。まだ数日は避難するのだから、その間は元気に動くのだろう。問題はそのあと静謐が戻って日常に戻るとどうなるかだろうか。

週初めに中継されたマーラーの五番などを流している。何といってもソロトラムペットが何度も噛んで安定した演奏とはならなかったことが痛い。だからフォアアールベルク交響楽団では谷のスキー場の村出身のフリーランサーのゲスト奏者を招聘していた。ミュンヘンでは度重ねて16分音符の短い変化記号で噛んで、持ち返すことなく葬送行進曲全体がガタガタになったが、そこではトラムペットが葬送行進曲全体を支えていた。その最初の三連符の運命の動機から楽譜通りにアチェランド気味にアウフタクトとしているのに比較して、ミュンヘンでは充分に刻まれていないだけでなく充分に軍楽隊風になっていない。第一トラムペット奏者が初日にも上手く吹けていなかったので辻褄を合わせたのかもしれないが、結局噛んでしまったようだ。座付き管弦楽団の公務というものが連夜の公演の歌手の危なっかしい歌に合わせるのが仕事ならば、こうした難しい要求に ― この場合は強拍16分音符を正しく刻んで弱拍のアクセントの付いた複付点四分音部へと下降する ― 正しく応えるのは厳しく、代表的なヴィーンのそれなどもへたったリズムで上手い誤魔化し方を伝統にしているに他ならない。

そのようなことを考えながら昨年の欧州演奏旅行の頂点であった「家庭交響曲」の演奏を振り返ると、一部にはアンコールの「マイスタージンガー」序曲で本領発揮とか、「最晩年の書法とは異なる」とかへんてこな評論家の文章が軒並みだったが、今回初めてじっくりこの曲を研究すると同様の「英雄の生涯」以上に興味深い。特に管弦楽のアンサムブルが問われているようで、この曲を以ってルツェルンやベルリン客演で音楽監督キリル・ペトレンコは座付き管弦楽団との成果を問うた訳で、将来的な教育的な面も含めての選曲であったことを理解した。作曲家自作指揮でヴィーンの座付き管弦楽団の録音が存在するといううことで、またその他にフルトヴェングラー指揮、YOUTUBEにはサヴァリッシュ指揮フィラデルフィアなどがある。

作曲家の自作自演も、フルトヴェングラー指揮のライヴも1944年のものらしいが、後者の録音は聞いたことが無くてこれほどまでに重要な録音を聞き落としていたと知って驚いた。前者は上記の場合と同じでやはりこの曲は交響楽団が演奏しないと駄目だと思ったが、あの時期でもこれ程に充実した演奏をしている後者の演奏は驚愕でしかない。恐らく、現存するこの曲の録音で最も重要なものではないだろうか。楽譜に忠実にそれ以上に譜読みをしていて、それは後年のカラヤン指揮のものと比較すれば一目瞭然だ。フルトヴェングラー指揮のリヒャルト・シュトラウス録音になかったゆえに、カラヤンが「英雄の生涯」で成功できたともいえよう。



参照:
ワイン祭りを避けるついで 2017-06-09 | 生活
入場者二万五千人、占有率93% 2017-04-21 | 文化一般
苦み走るようでなければ 2017-02-13 | ワイン
九月の四つの最後の響き 2016-09-23 | 音
by pfaelzerwein | 2017-06-11 01:57 | 生活 | Trackback
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