人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ライム香の清涼感と黒胡椒

お客さんを迎えるためにワインを購入する。フォン・ブール醸造所での試飲には興味がないと言われると、そこは生来の天邪鬼で判官贔屓したくなるのである。

その意味することは本人に訊ねてみないと判らないが、やはり二十年来の低迷がこの名門醸造所のイメージを甚だしく落としているのだろうと想像する。とは言いながら、過去の栄光のそのワインを体験したことはないので好い加減なものである。それでも過去から引き継ぐその土壌の良さからすると明らかに潜在力はドイツでトップクラスの醸造所であるに違いない。特に土壌を活かすワインつくりへとまたバイオ農業へと突き進むドイツ高級ワイン業界にとっては、ここのワインがトップでなければ困るのである。

実際のここ数年の成果を2008年度のリースリングに確かめたいのである。何のことはないまだ試飲していないグーツリースリングと呼ばれる協会VDPのなかで最も基本となるカテゴリーの2008年産ワインに舌鼓を打つ。

こちらも熱心なのでご酔狂のお客さんの意見はやはり醸造所にとっても大切である。

「なかなか良いじゃないですか」、「これはまたエレガントですね」

産地の場所を聞くとルッパーツブルクも挙がっていたから、雹被害にあった場所のものも入っているのだろう。基本的にはヘアゴットザッカーからウンゲホイヤー辺りだから、最初の内に摘み取っていたあの葡萄かと納得である。

「新カテゴリーで、何処の醸造所も苦労して造っていることは知ってますが、実際にはまだまだ醸造所の看板となるようなもの殆どないですよね」

要するにグーツリースリングとして十分に顔になるワインである。価格の8.50は決して安くはないのだが、この価格の中でこれほどエレガントなものは少ないだろう。

「日本の市場では新鮮なワインも知られていなければ、かといって飲み頃の熟成したワインもなかなか知られていないからね」と「これならピクニックのシュヴァールテンマーゲンに最高だ」と食事の相性まで指定する。

次ぎは「半辛口だけど実際は辛口の個性があるです」とキャビネットのユリアを勧められる。おかしな名前のついているのはこれまた悪い印象しか持っていないのだが、思ったほど悪くはない。

「ほら寿司に合うでしょ」とこちらの反応をみるので、

「いやー、私には辛口の方がさらっとして良いけど、まあね、これは丁度ラインガウなどではクラシックとか呼ぶタイプだね。しかしどうしてこれだけキャビネットなの」と訊ねると、

「どうしても甘口になると、気にする人がいるから」と

「なるほど糖の添加とかね」

とは言いながらアルコールの増強のためのモーゼルでは伝統的な辛口のためアルコール増加の補糖のことは言い忘れた。

大変面倒なお客さんである。

しかし、こうして良い状態でそれなりのものを迎えるお客さんに試してもらえることは大変喜ばしい。ライム系の酸で黒胡椒香が極弱くある。微かに感じる苦味はライムのそれだから寧ろ清涼感である。大変秀逸な辛口である。但し若ければなのだろうが。さて、色も素晴らしくどんな感想が聞けるか愉しみである。

「頑張って、売り込んでよ」と別れ際にお声が掛かる。
by pfaelzerwein | 2009-03-02 05:34 | Trackback
<< 我慢し切れない美味さ? 役目終えたTV放送の私物化 >>