山小屋の朝の味噌汁に舌鼓

ドイツアルペン協会の機関誌2009年八月号の第二特集は日本アルプスである。圧倒的に有名で多くの外国人が訪れる、信仰登山の対象となっている過密な富士山よりは静けさの味わえる北アルプスに矛先が向う。日本におけるアルピズムの発祥地である上高地から唐沢山荘に一泊して穂高岳山荘に入り穂高・槍縦走を目指すのはなぜかスイス人夫婦のようである。

岩肌に書かれる標識を見てまるで書道のようだと感動する。道標ばかりか地図も日本語で書かれていて、分からない者には標高線が頼りで心細く進むが、暫らくすると彼らの日本語程度の英語を使う登山者に出会い、それは左の捲き道であった事を教えて貰う。手振り身振りのコミュニケーションにも慣れて、「こんにちは」と「ございます」の挨拶にも慣れて漸く小屋に着くと、そこでは便所のスリッパでの食堂入りなどと外国人が起こし易い間違いを経験しながらも、今は巾が広くなった畳で寝泊りする。翌朝食欲旺盛に、予想外の朝食に、納豆を除けて、舌鼓を打つ風景が綴られる。

面白い観察は、日本人の登山者の多くが首に汗吹きタオルを巻いていること以外にも白い手袋をしているというのである。軍手の事かと思われるが、今でも人気があるのだろうか?一度も使った覚えはないのだが。そして、小屋の周りには有料のテント場が用意されているのを見て、アルプスの山小屋に比べて日本のそれは料金が高くテントが多く利用されているのを知る。そこで多くの登山者がその大きさといい重さといい押しつぶされそうな荷物を担いでいるのにはこうした背後事情があったのだと悟る。

またゴアテックスに全身をかためてというのは理解出来たが、立派な雨具にキャハンというのはあまり理解出来なかった。どちらかといえば、キャハンを上手に使っているのは氷河の発達したアルプスの登山者だと思っていたが、今冬にハイキングにキャハンを使っていたら興味を持たれた。やはり何処の地域でも装備や知識は主にその地域で活動する人種によって偏りがあるのだろう。正直な話、上の地域で壁や冬山は登っていても夏山ルートを辿ったことがない私の感想であるからこれも大変偏っている。

天候の急変によって、穂高山荘小屋にてなにもしない一日を過ごすよりも逸早く下山して、「飛騨高山」見物に駆けつけたというのは正しい決断に違いない。下山して直ぐに温泉に浸かるという代わりに、飛騨国分寺の庭の蝉時雨に芭蕉の俳句の真髄を感じて、西国や四国の札所巡りを考えるというのもそれはそれで間違いではなかろう。



参照:
"Panorama - August 2009" Magazin des DAVs, von Karin Steinbach Tarnutzer
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by pfaelzerwein | 2009-07-31 00:37 | アウトドーア・環境 | Trackback
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