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オープンに対応出来るとは

またまた初冬の試飲会である。数年ぶりに一般客に向けの試飲会が開かれたのはミッテルハールトのミュラーカトワールである。HPのVIDEOにあるように業界向けのものと同じように催されていて全般的に好印象を受けた。

ビュルガーガルテングランクリュは細身に造られているが、なにが出て来るかは一寸疑問である。それでも清潔さは抜群で、それは2008年産のワインの全てに当てはまる。完全に方向を変えて来ている。そこで醸造親方に二三質問をした。

「ヘーレンレッテンが面白かったんだけど、全体的にスマートになって来ているよね」

「いや、それはまだ開いていないし、多層的には他ならないんだけど、貴腐を完全に取り除いて、清潔な葡萄を選んでいるからね」

「すると、収穫量は落ちるって言うことだよね」

「規定よりも落としてあるのは当然で、それだけのワインには仕上げっているから」

「ショイレーベも美味く出来上がっているけど、ブルグンダーの樽味は一寸強いよね」

「ああ、あれは樽が新しくて、一年目でこれからなれてくると思うけど」

「ヴァージンを使っているようだけど、バリックではないし、モーゼルのフーダーでもないし」

「古典的な昔から使っている大樽ですよ」

「木は何処から来てるの」

「この近辺の昔からやっているところがあって、注文してから何年もまたないといけないんだけど」

「なるほど、実はビュルガーガルテンのシュペートレーゼを家で飲んだのだけど炭酸が多いよね。今日もそれは感じるし、どうなのかしら?ステンレスで抜けてないっていうのは一寸ね」

「それは、これからブルグンダーで使った後にリースリングに廻していくので、二年ぐらい先にはなんとか」

「そりゃ、グランクリュとかになるとどうしても求められるよね。っていうことはこれから期待していいかな?」

「そうですよ、上昇しなければいけないので、下降っていう訳にはいかないでしょ」

「2009年産は樽を使えるの?」

「まだ分からないけど、もしかすると一部は」

「赤はもうやらないの?」

「それも二年後ぐらいに新たに出せると思いますよ」

こうしてまたまた立ち入ったお話をしてしまった。この界隈のワインの大権威シューマン博士を尻目に。一体、私は何様だ?なにか飲んで官能試験を繰り返し、体験積み重ね、それを研究して現場の色々なお話を聞いているうちに、まるで自分の手を動かして醸造をしているような錯覚に陥るアル中症状になっているらしい。それに疑問などがあると、最新の化学技術研究資料などに目を通すことが増えている。おかしな知識がおかしな形で入れ知恵されて仕舞っているのである。そして飲み手としての経験は若い親方よりも豊富であり、更には幅広く愛飲しているだけでなく、試飲の場数がここの所突出して増えて来ている。更に様々な人のお相手をしているうちにある種の市場の様相というものも見えて来ているので、自らの嗜好とは異なった所でそれらのワインを判定出来るようになりつつある。所謂ワインの質の良さ悪さである。

醸造家は、自分の造ったもののその良し悪しを誰よりも知っている。それでも様々な人の嗜好にどれだけ合うかはあくまでも予想でしかないので、特に一般のエンドユーザーの反応の声は喜ばしいに違いない。だから、上の場合でもビュルガーガルテンのシュペートレーゼは本日の売れ筋だったようだ。それを指して私は言う。「炭酸が抜けると独特の気の抜けたビールのような埃臭さが出ますからね」、要するに多くの顧客はそこまで先を見抜くまでことは出来無いのである ― 私はそれを一本買って自宅で確認しなければならなかったほどであるから当然だろう。

そうした点を指摘して、「それはねこれこれの理由があってね」というお客さん。そりゃー放っておけないよね。そしてそうした批判にはじめてオープンに対応出来た醸造親方をみて、もしかすると期待出来るかなと思った。しかし本当はオーナーが経済的にそうした品質向上への資本投資を出来る状態に経営を司っているかどうかの方が大きいのである。ステンレスの設備の投資はやはり大きかっただろうが、それへの経済的な反動や親方の交代という流れがあったことに、なんとなくその裏側の事情まで見えてきたような気がしたのである。



参照:
キートリッヒ村のワインを飲みましょう!の巻   (Weiβwein Blog)
家で飲む方が美味いこともある (新・緑家のリースリング日記)
by pfaelzerwein | 2009-11-09 07:22 | 試飲百景 | Trackback
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