挑戦を受けながらの武者修行

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ルネッサンス時代の建造物と雰囲気に囲まれてその時代の音楽で始まった二十周年式典であった。父親の死亡後に息子のハンスイェルクが学校を出るまで母親が醸造所を預かっていたレープホルツ醸造所が、樽売りワインしか出来ないような南ワイン街道のやせた雑食砂岩のリースリングで有名になったのはやはり現在の当主ハンスイェルクの力によるどころがおおいのだろう。

顧客代表として挨拶したハイデルベルクの地質学女教授は、その当時を思い出しながら語った。まさにこの女性が現在のテロワールを反映した要するに土地のミネラル風味を活かしたワインつくりに大いに基礎知識を与えたようである。当日のワイン地所案内を引き続いて行ったハンスイェルクの弟もノイシュタットのワイン研究所に勤めているらしく、過去二十年ほどの葡萄の酸と糖比重の表をもって示唆に富む話を披露した。特に、今年つまり2010年の酸は現時点では二十年前に遡るほどの量感で、今後の天気に大きく左右されるとあり、実際にたまたま採取した葡萄がエクスレ61度しか示していなかったことでもそれは十分に理解できた。

あと六週間ほどの間に、例えばグローセスゲヴェックスに要求される95度に近づくかどうかは大変緊迫する状態になってきた。やはりこの程度の醸造所では、そうなれば酸を弱める醸造方法なども視野に入ってくるのが、まさに一流の醸造所との大きな差異ではないだろうか。必要な収穫と出荷は、例えば2006年を思い出せばよいように他所からでも葡萄を購入してきてでも売らなければ生計に係わるのである。当然の事ながらそうなればそれなりの極辛口リースリングは提供できてもそれ程の質が望むべくもないことは明らかなのである。

高級車で乗りつける古くからの顧客も多いのか、年齢層は平年に比べても高かったが、その中で本当にレープホルツ氏の目指すリースリングを本当に評価できているものは決して多くはないことが今回も知れた。要するにあまりリースリングの深みなども分からない者はむしろ名門の大手醸造所よりも少なくないと感じた。

もちろんのことすっぱくて旨みのないリースリングなどはお付き合いであって、香り豊かなムスカテラーや赤ワインなど、リースリングに於いてもプファルツでは唯一のロートリーゲンデス地所の味のあるそれを選ぶ人が少なからずいる。むしろ、本物の本物であるガンツホルンや今年からの新商品「ナテューアウシュプルング」の価値の分かる者などは殆ど居ない。

こんな所でブルグンダーやバリックのそれを愛でているぐらいなら南ワイン街道のどこの醸造所にでもそのようなワインは幾らでも安く転がっている。目が節穴なのか、なにかおかしな知識が彼ら彼女らのワインの選択眼を鈍らしているのかは分からないが、レープホルツ氏が言うように「お客さんがあってこそ遣りたいことが出来る」と言う感謝の弁には高尚なものを売る有名な古本屋の老舗が売るエロ本にも似ているところがある。

地元出身でシュトッツガルトに在住のおばさんと話をしていたのだが、ブントザントシュタインのそれは微炭酸が気に食わないが、「ナテューウアシュプルング」にはそれがないから良いと言うと、「微炭酸はあまり気にならない」と仰る。そうなると、ロベルト・ヴァイルで叱った話までしなければいけなかったのだが、「同じ金を出してなぜ炭酸割のようにステンレスで作って炭酸が抜けていないワイン」を買わなければいけないかという批判が分かっただろうか?

つまり口当たりの良い清涼感のある飲み物が欲しくて高い金を払っているのではないのである、ワインはワインの味がしなければいけないのである。こんな初歩的な話も分かっていないならばキャリフォルニアヴァインでも飲んでいれば口当たりが良かろう。

残糖で騙していた2004年産より良年2005年産ピノノワールを吟味していると、親仁が話しかけてきた。要するにその吟味である。最近は多くの趣味人から「挑戦」を受けるようになってきた。彼に言わせるとナーへはやはりデンノッフが良いらしい。「あんなのは甘いもの特化と違うのか」と正すと良い辛口も作っていると言う話であった。「辛口のリースリングはミッテルハールト」と決っているのは何時も繰り返しているのだが、上のおばさんがゲオルク・モスバッハー醸造所のことを知りたがっていたので推薦しておいた。恐らく彼女にはレープホルツのそれよりも遥かに好ましいリースリングに違いない。



参照:
VDP グローセス・ゲヴェクス試飲会 2010 (1)
VDP グローセス・ゲヴェクス試飲会 2010 (2) (モーゼルだより)
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by pfaelzerwein | 2010-09-15 02:32 | 試飲百景 | Trackback
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