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核廃棄物の無毒化の錬金術

核廃棄物を無毒化できないか?もし可能ならば安全な原子力発電のもとでエネルギー政策が解決するかもしれない。無毒で安全な廃棄物ならばそれほど問題もなく、一度大気中にあふれた放射性物質も無毒ならば核は環境に必ずしも悪いものとはならない。

そうした研究に一つとしてEUの「ミラ」プロジェクトで日本や白ロシア、ロシアや米国からの研究者を交えて行われるように昨年決定した内容が報告されている。なるほど無毒化までに至ってはいないが、放射性核種の安定化と半減期の短縮が可能となるかもしれない。たとえば半減期二万四千年の同位体プルトニウム239を処理すると中性子を加え、僅か二年の半減期しか持たない核分裂生成物セシウム134と安定した同位体ルテニウム104が生じるというのである。永遠に放射能を発し続けると思われていた核廃棄物が、二年ごとに半減していくとなるとまるで夢のようだ。原子炉冷却材としても同時に使われるビスマスと鉛の核子に加速された陽子を当てることで、核反応から中性子が飛ぶ出す。使用済み核廃棄物から分けられた処理されるべきアクチノイド核種の核が中性子を受け取ったり核分裂したりして、中性子の放出でより小さな同位体となる。

この工程を核変異工程と呼び既に80年代にイタリアのノーベル賞学者カルロ・ルビアによって確立されたようだが、技術的には今日に至るまで非常に複雑な課題が残っているようである。

たとえば、最初に使用済み核燃料からアクチノイドを分離する作業において現在は99.9%のレヴェルだが99.99%まで高めることが目標だとこのEUプロジェクトの中核であるカールツルーヘの核廃棄研究所のアンドレアス・ガイストは語る。

プルトニウムの変異工程は確立されているのだが、それに性質の似ているアメリシウム、キュリウム、ネプトニウムなどは困難なのだという。全核廃棄物の僅か一パーセントがアクチノイド核種なのだが、またその九割方がプルトニウムということになっている。ウランより重いアルチノイドは、内部被曝すると、細胞増殖異常の骨、腎臓、肝臓、血液系の癌を引き起こすことで猛毒と知られているものである。

またカールツルーエ核研究所の研究者であり、ヘルムホルツ協会の地区長ヨアヒム・クネーベルは、冷却体自体が250度から450度の高熱であり、それを如何に冷やせるかが鍵であると見ていて、材料工学的にも核分裂が起こるその容器の鉄のコーティングなどで劣化を避ける必要があるとしている。

ドレスデンのロッセンドルフ研究所のアルノルト・ユングハンスは、高エネルギーを持つ電子を含む冷却材の問題で、中性子の放射時間と核のエネルギー量からの実験を繰り返しているようだ。

こうした問題が解決されると2014年から試験操業が始められて、2023年には実用化が予定されている。ベルギーのSCK-CEN研究所に設置されたこの装置は十億ユーロの投資で70メガワットの出力規模がある。しかし、そうして処理されるべき核廃棄物は、世界で毎年二十六万トン排出されて、毎年その量は加速されていて、そうした全世界の深刻な社会問題を一挙に解決するものではないようだ。



参照:
Die zauberhafte Entschärfung des Atommülls, Monika Etspüler, FAZ vom 22.6.2011
解体する原子炉が旨いのか 2011-06-23 | テクニック
開かれた議論のない技術大国 2011-06-20 | 文化一般核廃棄物を無毒化できないか?もし可能ならば安全な原子力発電のもとでエネルギー政策が解決するかもしれない。無毒で安全な廃棄物ならばそれほど問題もなく、一度大気中にあふれた放射性物質も無毒ならば核は環境に必ずしも悪いものとはならない。

そうした研究に一つとしてEUの「ミラ」プロジェクトで日本や白ロシア、ロシアや米国からの研究者を交えて行われるように昨年決定した内容が報告されている。なるほど無毒化までに至ってはいないが、放射性核種の安定化と半減期の短縮が可能となるかもしれない。たとえば半減期二万四千年の同位体プルトニウム239を処理すると中性子を加え、僅か二年の半減期しか持たない核分裂生成物セシウム134と安定した同位体ルテニウム104が生じるというのである。永遠に放射能を発し続けると思われていた核廃棄物が、二年ごとに半減していくとなるとまるで夢のようだ。原子炉冷却材としても同時に使われるビスマスと鉛の核子に加速された陽子を当てることで、核反応から中性子が飛ぶ出す。使用済み核廃棄物から分けられた処理されるべきアクチノイド核種の核が中性子を受け取ったり核分裂したりして、中性子の放出でより小さな同位体となる。

この工程を核変異工程と呼び既に80年代にイタリアのノーベル賞学者カルロ・ルビアによって確立されたようだが、技術的には今日に至るまで非常に複雑な課題が残っているようである。

たとえば、最初に使用済み核燃料からアクチノイドを分離する作業において現在は99.9%のレヴェルだが99.99%まで高めることが目標だとこのEUプロジェクトの中核であるカールツルーヘの核廃棄研究所のアンドレアス・ガイストは語る。

プルトニウムの変異工程は確立されているのだが、それに性質の似ているアメリシウム、キュリウム、ネプトニウムなどは困難なのだという。全核廃棄物の僅か一パーセントがアクチノイド核種なのだが、またその九割方がプルトニウムということになっている。ウランより重いアルチノイドは、内部被曝すると、細胞増殖異常の骨、腎臓、肝臓、血液系の癌を引き起こすことで猛毒と知られているものである。

またカールツルーエ核研究所の研究者であり、ヘルムホルツ協会の地区長ヨアヒム・クネーベルは、冷却体自体が250度から450度の高熱であり、それを如何に冷やせるかが鍵であると見ていて、材料工学的にも核分裂が起こるその容器の鉄のコーティングなどで劣化を避ける必要があるとしている。

ドレスデンのロッセンドルフ研究所のアルノルト・ユングハンスは、高エネルギーを持つ電子を含む冷却材の問題で、中性子の放射時間と核のエネルギー量からの実験を繰り返しているようだ。

こうした問題が解決されると2014年から試験操業が始められて、2023年には実用化が予定されている。ベルギーのSCK-CEN研究所に設置されたこの装置は十億ユーロの投資で70メガワットの出力規模がある。しかし、そうして処理されるべき核廃棄物は、世界で毎年二十六万トン排出されて、毎年その量は加速されていて、そうした全世界の深刻な社会問題を一挙に解決するものではないようだ。



参照:
Die zauberhafte Entschärfung des Atommülls, Monika Etspüler, FAZ vom 22.6.2011
解体する原子炉が旨いのか 2011-06-23 | テクニック
開かれた議論のない技術大国 2011-06-20 | 文化一般
by pfaelzerwein | 2011-06-24 19:17 | 数学・自然科学 | Trackback
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