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ファンデルスワールス感

秋に逆戻ったような日曜日だった。二年ぶりに訪ねるのはノイシュタットの山沿いの城の下に立ち並ぶ瀟洒なヴィラである。ミュラーカトワール醸造所は1990年代にステンレスを使った清潔なリースリングで名を成したシュヴァルツ親方の力もあり、ドイツで最も急成長した中堅の醸造所として有名であった。

そして親方の2001年の引退後、その品質で断層を埋めることが出来ずにきた。そして、最後に訪ねた2009年の試飲会ではその大きな変換点として木樽の必要性を話したものであった。

試飲会前に開けた2005年産のビュルガーガルテンのブロイメルと呼ばれるグランクリュがその残糖感に拘らずなんとかバラの香りも漂ってものになっていたので、期待して出かけたのであった。

結論からすると、今度は木樽の使い方は議論しなかったが、一定の割合を増やす方で使っていることは確かで、それなりの効果は表れており、グローセスゲヴェックスとして割安のそれは買いであった。

価格的に、フォルストのゲオルク・モスバッハーのウンゲホイヤーなどは殆ど同じ価格帯となっている。その価格として、全体にアルコールを上げているこの醸造所の中でも13.5%と最も高く、糖を十分に落としながら、ミネラル感を強く出している。問題は、減酸した酸が今後どこまで効いてくるかであって、少なくとも批判と対象となっていた重さはどのワインからも消えているのである。

その中でも興味を持ったのは、三種類あるラーゲンヴァインで、ビュルガーガルテン、マンデルガルテン、ヘーレンレッテンとその土壌の個性を巧く出していた。最初のものは若干酸が弱い感じを受け、最後のものはその特性からあまりにスマート過ぎで弱さを感じる。丁度ビュルクリン・ヴォルフの2010年産ヴァッヘンハイマーが、ベーリックよりも一般受けがするように分りやすいワインである。そのベーリックと比較できるのが、まさしく真ん中のマンデルガルテンであり、まだまだ酸・糖・果実風味等がばらばらに混在しているのである。いずれ瓶熟成の過程を経て明確な輪郭を現すだろうがこうした混沌は必ずしも否定的ではなく、2010年産の一つの特徴として明記しておきたい。

どちらかと言えばそうしたふっくらとした環を描いたようなファンデルスワールを想起させるような結合と浮遊は、女性に好まれるようで、男性でこの魅力を評価する者は可也のワイン通と思われる。よく言われる角の立ったワインの方が分り易いのである。

2009年産のムスバッハのワインも売れ残っていたが、これは逆に酸が丸くなってしまっていて苦味だけが目立ち全く良くなかった。若干葡萄のプレスや扱いなどに問題があるのではないかと思わせた。

その他の2010年産オルツヴァインである、ハールト産やギメルデリンゲン産も同じ傾向があり、更に最後のものは石灰による助酸が効き過ぎで、これならば三ユーロほど高くとも酸が効いたクリストマン醸造所のものを取るだろう。

ブルグンダー種では、ヴァイスブルグンダーは三種類で高価なものにバリックが掛けてあるがこれはあまりどうでも良い印象で、寧ろグラウブルグンダーはバリックを掛けていないものが10ユーロで酸が効いていて気に入った。バリックの掛け方はまあまあであり嫌味はなかった。

もう一本購入できたのは、2009年産ハールトから造ったゼクトで、価格12ユーロならば買いの綺麗なリースリングゼクトとなっていた。

今回寧ろ注目したのは、甘口のリズラーナー種のワインである。甘口と言えば強烈な酸とその個性でリースリングのトロッケンべーレンアウスレーゼやアイスヴァインが有名であるが、それよりも粒が小さく早く貴腐によって干し葡萄となりやすい、このリースリングとジルファーナーの交配種が試されている。その結果は比較的量感のある酸と糖のバランスに表れているようで、瓶での熟成は分らないが、試みとしては成功している。



参照:
オープンに対応出来るとは 2009-11-09 | 試飲百景
厳寒の忘年会での散財 2010-12-04 | 暦
待降節ストレスを試して流す 2009-12-23 | 試飲百景
by pfaelzerwein | 2011-11-09 20:32 | 試飲百景 | Trackback
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