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民主性が問われる勃興政党

海賊党が日夜話題を提供している。お里がお里であるからネットでの話題が多いようだ。ベルリンの代表理事であるハルトムート・ゼムケンは、自らのブログにて、党の一人一人の党員に対しての対応をドイツ国家社会主義労働党と比較したことから解任を求められたが、それを拒絶した。そしてその内容を謝罪するとともに、その任を引き続き全うするとした。実際にベルリンの理事はその判断を支持した。

またシュレスヴィック・ホルシュタイン州もしくはノルトライン・ヴェストファーレン州で州の与党として政権に関わることは可能だと連邦代表のゼバスチァン・ネルツが語る一方、その可能性を緑の党のロート代表は否定している。更にそれに付け加えて、海賊党はまるでメルケル・チャイルドだとこき下ろす。それはメルケル首相の海賊党の勃興に対する様子見を批判してのレトリックである。

つまり首相は、最低収入性や出生率について語ったかと思えば、何一つ企てる訳でもなく、翌日には子供手当てについて語る有様だと、何でもできるという態度だとその無責任な言動を荒立てる。

そのような批判に対してネルツ代表は、批判の的となっていた嘗て自らが推し進めていた党執行部の独立性の考えを変化させて、執行部の中身を受け入れると言うことはその専断性を得ると言うことでもあり、キリスト教民主同盟を見ればよいとなる。そこでは、脱原発やユーロ救済などは、執行部の判断であって、党のボトムアップの判断ではなかったとする。だから、ボトムアップの政党の方が、メルケル首相の思いつきの党よりも安全だとする。

そうした背景には、党員の中に極右に近い党員が少なくないなどの問題が顕著化してきていることで、また同時に政治の激務から政党の重要な任務を辞退する向きが増えてきていることなどが関連しているのだろう。面白いのは、連邦執行部のマリナ・ヴァイスバントが心肺異常でであることを明らかにしたことに関して、ネルツ代表は「いつもキーボードに手を当てているような生活は健康に良くない」とその激務を思いやったことである。

民主的なイデオロギーだけではなく、民主的な党運営も問われ、その基本的な姿勢にも厳しい目が注がれる。それゆえに、もはや無視できなくなった政党であるだけに、こうしてその話題が絶えない。何処の馬の骨とも分らない政治結社に対して、国民政党へのそれとも変わらぬそれ以上の報道やあらゆる層からの賛否多数の見解を議論化させていくことはとても大切なのである。それは、支持が集まり公的な政党として期待も不安もあるからこそ、マスメディアの義務であり、学術的なジャーナリズムの対象であることには間違いない。

如何なる未来への期待の政治プログラムがそこに提示されていたとしても、その政治的手法が民主的な手順を踏んでいない限り、そこにはなんらのばら色の未来などはありえない。政治は革命や政権掌握とは全く異なるのである。そのようなことは繰り返すもない歴史的必然なのだが、それすら語らない知識人などの存在意義があるのだろうか?



参照:
Piraten-Abgeordneter vergleicht Erfolg mit NSDAP, FAZ vom 23.4.2012
海賊党が問題提議したもの 2012-04-22 | 文化一般
親権者が行使する選挙権 2012-04-12 | 歴史・時事
ビール一杯のお駄賃 2011-12-08 | 生活
覚せい剤の民主的な合法化 2011-12-04 | 歴史・時事
情報の集約を阻止する運動 2011-10-30 | 文学・思想
by pfaelzerwein | 2012-04-24 22:42 | マスメディア批評 | Trackback
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