前日の疲れだろうか?前日は今シーズン最初の奇岩地方のクラシックルートを登る会であった。それに適当に邪魔をするように出かけたのだ。行き先を聞いて、急いで調べて、登りたい所を試した。最初に選んだのは、最近「聖書」となっている資料で紹介されていて、登ったことのない中で最も容易なルートであるチムニーの短いルートである。要するに身体慣らしに選んだ。それがこの疲れの元凶になったのだろうか? そもそもチムニーの下の門の足元のようなところまでは、難易度一級の渡り廊下状になっているので、全く問題がなかったのだが、その見た目同様に上部が狭まって曲がっているので、何処から抜けれるのかと思わせるのである。そして左右の壁には殆ど手掛かりがなく、比較的広く広がっているので足を広げて突っ張るのも厳しい。 そしてハーケンやその他の中間支点どころか確実な楔の箇所も見つからない。要するに手のつけようがあまりないのだ。つまり下から見てあそこまで行けばなんとかなるという希望的な観測が全く生じないので、我武者羅に登ってみることはできないのはまともな人間ならば当然である。そして両サイドに突っ張って無事に下りてくるのは難しいと感じさせる。そのような状況であれやこれやと考えながら、資料に書いていた内容を思い起こすが、最初の右側の一箇所に楔を止めるのが精一杯であり、次は可也上で突っ張った状態では、片手の周辺に楔を落ち着いて差し込めないことは一目瞭然である。要するに両手両足を左右に突っ張っているだけで何も出来ないも同然である。とは言いながら、少し試して見なければ分らないと前向きになったり後ろ向きにしたりと試すが、糸口を見出せない。 そうこうしているうちに、下から「どう考えてもあの狭いところは抜けられないから帰ってこい」とパートナーから声が掛かる。こちらは資料を読んでいるのでいらいらするのだが、作戦が立たない。そこで右の奥の方の上部に割れ目が走っているのに気がつく。まさにこれが資料にあった次の中間支点設置地点なのである。なんとなくそのように記憶している。こうなればアクションしかない。そして、頭よりも上部から始まるその割れ目まで登って、その下の端に右足の先をねじ込んで、左足を飛ばさないように突っ張りながら、割れ目に黄色のフレンズを刺してみる。綺麗に挟まれたが割れ目が外側に開いているので可成り不安である。そしてずり落ちたときのことを考えて、更に割れ目の上部へとそれを移動させる。 さて次である、左足の上部に明らかな横の割れ目と足場があるので、そこまで身体を引き上げるが、今度はどうみても反対側の背中の方を向かないと次の一手を打てないことが分る。要するに両手で突っ張りながら下半身を百八十度回転させなければいけないのである。その動作自体は、足場が片方にあったので問題なく出来たのだが、正面の下方は可也下へと落ちているので恐怖心との戦いでもある。そして向きを変えた右の壁の上の方に次の横の割れ目が走っているのを見つけて、そこに手を伸ばして次の小さい楔をねじ込む。資料で読んだ印象の通りである。 そして今度は右手の手掛かりを掴んで左足を手掛かりの壁の方へと引き寄せて、左側の壁とは一旦お別れである。しかし、手掛かりの岩が重なって浮いて脆くなっているので、怖くてそれには頼れない。その端の方へと手掛かりを移して出来るだけ引っ張らずに壁に乗り移ることが出来た。これで突っ張り登攀から垂壁登攀へと場が移るのである。そして、上部の狭くなった煙突に頭を突っ込んで打開策を探るが、ヘルメットが挟めるどころか、眼鏡がギシギシと音を立てだした。これは流石に不可能だと認識して、いよいよ宙に浮いている入り口の方へと横へとへつる。するとどうだろう左手が、気がつかなかった場所に砂時計のようなものを掴んだ。これだと思った。バンド細引きを首から外して、ひっかけようとするが、これで安全性が保障されるまでの焦りを感じた。 中々狭くて手が通らず、細引きの端が反対側から掴めない。しかしこうなればそれしかないのである。もしここで落下すれば中吊りになりそうな按配で心臓が高鳴る。そしてやっと細引きを通してカラビナをかけてザイルが掛けられた。必要があればぶら下れる体勢になったのである。そうなれば大胆に割れ目の端まで行って、オヴァーハングの上の手掛かりを探すことが出来たのだ。資料にあったように手掛かりも足場もあって、見た目以上に容易に乗り越えて、頂上稜線の木の幹に自己確保した。とても長い神経戦のような感じだった。一体どれほど長く中空で突っ張っていたのだろう。(続く) 参照: 命を粗末にしてはいけない 2012-07-03 | アウトドーア・環境 岩場で快適な晩を過ごす 2007-06-29 | 暦
by pfaelzerwein
| 2013-06-24 05:40
| アウトドーア・環境
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