歴史的な感動のその時当該の文章を読むとその技術的な経過の中でもアイスクライミングに関して、完全にメスナーの時代は歴史になっていることを感じた次第だ。メスナーの「第七級」などを手に汗して精読していた我々世代には、特に原本が翻訳されてという過程でその内容自体が過去のものになっていることには中々気づかない世代には、余計にその歴史化を強く感じるのである。 恐らくその壁は、1955年の初登攀から十四年、丁度54年前の七月当時は単独どころか殆ど登られていなかったようである ― それ以前に弟ギュンターと挑戦していて敗退している。それに数日をかけて当時は登るようなことがまだ考えられていたのには驚いた。その最大の理由は、アイスクライミングの技術的な進歩が深く関わっており、メスナー自身もピッケルは一本で、もう一本はアイスピックを使っている。要するに1970年代になって登場するピオレトラクションの二本のピッケルを使っての技術は開発されていないどころか、メスナーは「バランスを崩さずにステップを切れる傾斜ではない」と書いている。 我々の世代では殆ど氷にステップを切ることはしなくなったので、まさしくメスナーはまだまだその技術で活躍していたことがそこに示されていてとても興味深い。それゆえに、朝一番では出来るだけ傾斜の強い場所を避けるよいうにして登り始めているのは当然であろう。しかし実際には、上部岩壁での小さなハングの乗り越しや花崗岩のリスに苦労していて、氷の詰まった場所を避けるようにして、上り下りを繰り返してルートを探し出している。勿論そうした岩の場所であるから初期の残置ハーケンに核種の長さのザイルを引っ掛けて確保手段としていて、自らも持参の二本のハーケンも打ち込んでいる。 この単独初登攀を読ませるのは、なによりも、その重圧感とその開放の時の記録だ。久しぶりに嘗て「第七級」を読んでいたときのように引き込まれた。その文章内容自体が、1980年代に綴られたとしても、その後の「ヒマラヤの涅槃の世界」の表現とは異なっていて、当時を回想するには荒々しさを感じさせるほどに十分に率直な筆致である。久しぶりにアルピニズム文学を楽しんだ。 日曜日は、どんよりした朝から、昨晩の水滴が車を濡らし、地面を湿らしている中を走った。パン屋への人並みは十分であったが、いつもの駐車場へというと一台しか停まっていなかった。暫くすると犬の散歩を兼ねてジョギングする男性が一人やってきたが、とても静かな日曜日である。道が濡れていて、何時降りだすか分らないので、峠往復のコースを取った。前日は川沿いの長めの取水井戸までの道を片道だけ1840歩、11分で走った。その疲れが若干残っていて、ゆっくりと走った。足の疲れや、金曜日の石切り場での上体の疲れもあって、テムポよりもピッチにまた呼吸に気を使って走ってみた。途中長めのピッチを切れた成果か、3130歩、21分は丁度一週間前のテムポを気をつけて走ったときと殆ど同じであった。何を意味するのか?下ってきて、5352歩、35分で先週よりも足元が悪いにも拘らず、なぜかピッチが伸びている。この二回の走りを通して感じるのは、腕の振りがよくなって来て、走る身体つくりが徐々に出来てきていることである。ランナーの上体には独特なものがあると思うが、少なくともクライミングの肩の解しには役立ちそうである。一時感じていた下腕の筋の張りよりも、上腕のそれを感じるようになったのはなぜなのか? この週は、比較的低調だった。理由は分らないが、天候の変わり目で多くの人がその影響を受けているに違いない。さて、いよいよシーズンのラストスパートである。石切り場では、難しいものを登るよりも自身の限界を試すために違う登り方で、様々な身体の動きを試している。技術に関しては、可也のところにきているのを感じている。もう一息、身体の軸を作れれば次の段階にいける。そうした練習の一つとしてクライミングダウンも戸外でやる練習に加える。限界域での登攀とこれらのボルダーリング張りの練習を併せていけばなんとかなりそうな気がしてきた。 なによりも動機付けも重要であり、確りとぶれない指針を持たなければ時間が足りないであろう。夏のシャモニやドロミテでの体験は、とてもその目標を現実味を与えてくれたのである。それでもこうした基礎練習の積み重ねで、やれることとやりたいことも益々明確になってくるのである。 参照: アルプスで最も過酷な壁 2013-07-21 | アウトドーア・環境 環境、ただそこにエゴがあるだけ 2010-01-23 | マスメディア批評
by pfaelzerwein
| 2013-08-26 17:23
| アウトドーア・環境
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