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PCとGCの相違を吟味する

PCとGCの相違について記しておきたい。プリュミエクリュとグランクリュの最大の違いは、そのミネラルの豊かさにあり、それは土地固有のテロワーそのものであり土壌と極致気象の為せる自然の技である。しかし、それだけではその相違を示せたことにはならないのである。特にドイツでは、示されるのはリースリングとなるのだが、その最大の相違を実感する機会を得た。それを記す。

今回試飲して購入したのは2004年産ヴァッヘンハイマー・レッヒベッヒェルである。PCとしてもラーゲヴァインとしてもそれほど意味のある地所のリースリングではないが、手元に残っているグローセスゲヴェックスつまりGCとの比較で吟味してみた。因みにそのGCとはフォルスター・ペッヒシュタインである。これは、リースリングにおいて最も意味のある地所の一つである。

2004年はまともな夏が訪れなかったので、当初から酸と傷みのような完熟でない葡萄がその特徴となっていたので、2003年の完熟の年度とは正反対の意味であまり評価は高くは無かった。しかしそれが、その酸とひ弱さが薬草臭や苔臭さのようなものを醸し出して、特別な年度と評価されるに至った。

その傾向のためかこの2004年のPCも新鮮味があっても2003年産には避けられないフィルンの趣が殆ど出ていなかったので購入したのである。価格も20ユーロ少しで勉強題材としては決して悪くは無かった。そして自宅で一本開けてみると案の定GCとの差が明白となったのである。

その差は、残糖感ではないが甘味としてそれが表れることで、GCには感じられないものである。翌日になってもそれが大崩することは無しに最初のグラスと最後まであまり変わらない。要するにワインだけをちびちび飲むならば果実味豊かでこれで十分に楽しめるだろう。しかし、それを食事に真剣に合わせるとなると甘く感じるのだ。

それはなぜなのか?決してPCにおいて糖を多く残して醸造している訳ではない。寧ろ、GCの方が残糖値は大きかった筈である。その差は酸の差であることが明白なのである。つまり、酸の量よりも質だと結論できる。酸がしっかりしていれば、残糖とバランスして綺麗な辛口として食事に合うリースリングであり続けた筈だ。瓶詰め直後は、PCの方が辛く感じたのではなかろうか?

PCは当然ながらGCよりも早く葡萄が摘み取られる。つまり酸の分解はGCに比べて十分ではないのは毎年同じである。要するにリンゴ酸の割合がGCに比べて大きく、ワイン酸として十分に存在していなかったのだろう。承知のようにリンゴ酸は瓶詰め直後には激しい酸として清涼感を齎すが時間が経つとそれは落ちて行ってしまう。そこで生物学的に熟成した葡萄のワイン酸が少なくとも二年を超えるときには効いてくるのである。

そもそもPCはGCに比較すると早飲みであり、なにも五年以上も新鮮であり続ける必要はないのである。しかしグローセスゲヴェックスはその価格と共にそれが求められて、五年後に古臭くなっているようでは誰も買わないのである。それが最大の相違なのだ。

悪いブドウの房を落として厳選された葡萄であるからこそ長持ちして繊細で力強いグローセスゲヴェックスが醸造されるのである。最終的には醸造所の判断であるが、そうした健康で酸の分解が進むテロワーであるからこそ、そうした手間とリスクを掛けても高価なグランクリュワインとすることが出来るのである。

これは同時に、たとえGC並みの土壌であっても例えばダイデスハイマー・ランゲンモルゲンのような素晴らしいミネラルにあふれていても、その位置からなかなか綺麗に酸が分解しないという場合もあって、PCにとどまっている場合もある訳だ。それでも十何年たってもワインとしては美味しい訳で、GCに求められるような食事に厳選されるような偉大なリースリングでなくても構わないということも言える。



参照:
素人を騙す金儲け評論 2013-10-02 | 試飲百景
嗚呼、グレーフェンベルク 2013-09-26 | 試飲百景
by pfaelzerwein | 2013-10-24 21:04 | ワイン | Trackback
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