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なんと内容の濃い試飲会

週明けの疲れはそれほどでもないようだ。気温摂氏一桁台の曇天の中を走る。約束の時間があるので、短く軽く流して帰路に就く。最後に頑張って走れたので汗をかいた。流石に上着は着たが、下半身はシュートパンツだった。

日曜日のミュラーカトワール醸造所での試飲会について書いておく。駐車場もいつものところに問題なく停められた。遅めに出かけたとのだが、遠方から態々訪れる顧客は減ったのかもしれない。ある顧客は2013年は悪い年度と語る人さえいる。もちろんそれは素人さんのどこかで得た通俗情報なのだ ― これだけの酸でも健康な葡萄をアウスレーゼ出来なかった醸造所が多いことを物語る。

それどころか2013年のミュラーカトワール醸造所は記念碑的な年になるのではなかろうか?相対的な評価でもあるが、この醸造所はシュヴァルツ親方の時分のようにドイツのトップクラスに再浮上したのではないかと思われる。プファルツで、五本指に入るだろう、軒並み大手が質を落としている状況では当然かもしれない。

グーツリースリングも8ユーロならば、シェーンレーバー醸造所のそれとも甲乙をつけれなくなっている。モスバッハー醸造所のそれより上手に造っている。ビュルクリンヴォルフ醸造所のそれよりも良いかもしれない。

次のオルツリースリングがまた素晴らしく。土壌の軽いギメルディンゲンの柑橘系と重い土壌のハールトの泥粉臭さが甲乙付け難いのだ。11ユーロのリースリングとして、レープホルツ醸造所のオェコノミラートがあるが、それが売り切れている現在何をこの価格に期待できるだろうか?これ以上のリースリングはあまり無いと思われる。例えばフォンブールのそれは酵母臭がひどく頭が痛くなるようなものだったが、これは大分良い。しかしレープホルツのそれは抜き出ている。天然酵母のヴァッヘンハイマーリースリングでも質は良くとも、個性ではオェコニミラートにはなかなか勝てない。

それに引き換えビュルガーガルテンは分厚くてもう一つ酸が効いていない印象を与えて、同じようにグローセスゲヴェックスも香りは豊かだが、瓶熟成の大きな可能性は感じさせなかった。これについては、先の2010年産の減酸とともにモーゼル出身の親方と話した。

「モーゼル出身の者にとっては、ドッペルザルツでの作業など日常茶飯で、肝心なのは最初のモストで処理してしまうことだ」と語るのだ。なるほどその影響が薄く、黄色く丸くならないリースリングを達成していた。

更に、リースリングのペトロール香について話題になったので、早速親方に質問してみた。咄嗟に「それはTDN」の影響と断言して、「腐りなんかよりもストレスが原因だ」と言った。これに関しては日本の人々がリースリングの特徴であって、ドイツのワインのそれだというような言い方がされるのだが、自分自身は殆ど感じたことがなく、土壌感としてぺトロール香があることぐらいしか知らない。そしてそのTDNについて調べてみるとなるほどと思った。特に海外の船便などで動かされるリースリングで発生しやすいとある。保存状況が悪いことを示すようだ。しかし今回話を振ったのは試飲会の顧客であって、そのような影響はあまりないはずなのだ。保存温度が高過ぎることもあり得る。

なぜリースリングでぺトロール香が言われるかについては明白な回答がネットにあった。それはTDNのカロチン色素が陽に焼けることで保護作用として日焼けすることにあるらしい。つまりドイツでも2003年産などはそれが顕著に出たとあるのは、実際に購入しなかったその年のグローセスゲヴぇっクスなどでは瓶熟成とともにその気配が強まっていた。

要するに、ぺトロール香というのはフィルンの一種であって我々品質の良いリースリングを楽しみたい向きにはあまり縁のないものだということになる。しかし、1970以降の温暖化で、ぺトロール香の発生はトリアーなどの調査でも明白となっている。本来ならばプファルツなどの陽射しが強い地域では水不足から日焼けするのだが、実際にはあまり経験していないのも不思議である。

もう少し推測するとプファルツのグランクリュではそれほど色が濃くつくような秋の日に照らされることなく収穫される好条件もあるのかもしれない。色付きは夏の陽の強さによるのだろうが、その時は葉が茂っているのでそれほど直射日光を受けていないのかもしれない。

兎に角、親方はモーゼル出身であり、その辺りを良く熟知していることを改めて教えられた。序に先日触れたビュルガーガルテンの塀の問題も単刀直入に聞いてみた。それほど高さがないので風の流れは問題なく、昼間に温まって夜冷えるので良いのだということだった。味筋に関しても話しておいたが、もう少し繊細さが出てほしいのは、今回のビュルガーガルテンも同様だった。

しかし、もう一つ上のヘーレンレッテンに関してはそのミネラル感とともに例年のようにあまりギスギスしない素晴らしいリースリングに仕上がっていた。それにしても我ながら、なんと濃い内容の試飲を繰り返しているのだろうかと思う。駐車場で声をかけてきたのは法律家のクライマーだった。冬の我がボールダーのことを話すと試してみたいようだった。



参照:
ライフスタイルにそぐわない 2014-10-25 | ワイン
スーパーブルゴーニュを物色 2014-03-17 | ワイン
by pfaelzerwein | 2014-10-29 02:53 | 試飲百景 | Trackback
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