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熱すぎないシュニツェルのうまさ

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とても良い宿だと書いた。靴親方のところで話すと、「あそこは食事が良い」と、地元の人らしく知っていた。屋号のヴィーナーホッフに因んでヴィーナーシュニッツェルを選んだ。ドイツではこれが食べれる店は少ない。更に上手に料理している店は近所の一軒しか経験したことがない。それは殆どの店でヴィーナー風のトンカツしかやっていないからだ。本物の小牛は料理にもコツがいる。

しかしオーストリアでは大抵はある程度以上のものが出る。だから決して珍しくはないが、同じように女将お勧めの鹿肉よりもこちらを選択した。価格も10ユーロと安くオーストリアの白ワインが楽しめるからだ。勿論白と言えばグリューナーフェルティルナーである。それがグラスヴァインとして二種類あった。そしてティロルヴァイルツシャフトヴァインと下線で強調してあった。「一体何のことか」と聞くと「ティロルの飲食団体向けの特製ワイン」だということでアペリティフのビールに続いて、食事にはこれを合わせた。

シュニッツェルはどこでも何故かサラダなどは別料金なのだが、ここではパセリ粉吹きジャガイモだけはついていた。サラダにパンが欲しかったのでそれを貰った。これまたクンメルなどが入っていて日曜日のパンに欲しかったので何処で買うのかと質問すると、あとで教えてくれると言ったが、「靴マイスターのところに行くなら、隣に良いパン屋があるからそこで買えばよい」と教えてくれたのだった。

さて、甘みのあるビールで喉を潤して、ワインを試す。なかなか酸があって新鮮なのだ。尋ねてみると配達は六月頃で、新酒だと分かる。2013年だから酸があるのだろう。そしてキリリとしていて、なんとなく花崗岩的なミネラルも感じられる。恐らく一本6ユーロほどの蔵出し価格なのだろう。これをクオーター楽しんだ。面白いのは、ここでもヴィーンのザッハーレストランと同じようにもしくは日本の喫茶店と同じように水が提供される。その水が軟質でなかなか美味いのだ。聞くと谷の左岸からの湧き水だという。石灰の岩壁があるぐらいなのにとても良い生活用水を使っている村である。これは最後にお替りした。

肝心のシュニッツェルもとてもきれいに出来上がって、そのサクサク感を楽しんだ。そしてありがちな粉の下味付け感が少なくてとても薄味で大満足だった。熱さで誤魔化す感じでもなく、とても落ち着いた出し方で、料理人の自信が伺えた。オーストリアではこれが上手く出来ないと一人前ではないに違いない。ソースの甘みと先ほど飲んだビールの甘み、それでも違和感の全くでないワイン、完璧だ。女将に、日本ではオーストリアワインが政府の後押しでとても高く評価されているので、ドイツのワイン処に住んでいる者としては対抗意識があるのだと話した。

二千メートルの上まで歩いて、走って降りてきて、とても腹が減っていたので、心配だったがたらふく食した。足りないのはアルコールだけなので、八分の一のムスカテラーを注文した。これは女将の好きなワインだということだった。試しに飲んでみたのだが、意見を求められたので、「普通はマスカットの香りだけなのだが、これは果物の皮のエキス感の苦みが気持ちよい」というと、彼女は満足していたが、「それが南ティロルのトラミナーにも共通するかもしれない」というと、「よくご存知ですね」と感心された。ワインはシュタイヤーマルクのものだったが、ティロルの一体感のようなものを少し感じさせた。

食後に再びビールと水を飲んで、腹いっぱいになって、支払いを済ませると、食事は全部で30ユーロを少し超えただけだった。全く問題なく35ユーロを宿代と一緒にクレジットカードで支払った。とても素晴らしい。

なんといっても、ハートマークが宿中に飾られるフランシスコザビエルファンなのか女将の好みの部屋であるが、驚くことにシャワーが浴びられないほど熱い。通常のホテルの水はなかなか暖まらないので、先に水を流しておいて温かみを確認してから使うのだが、このホテルは違う。部屋のヒーターも上階でもアツアツだ。こんなことをしていては商売にならないと思っていると、なんとなく考えた。これほど熱いと長く使える人とはいないだろうと。光熱費だけでなくて、水も節約できるだろうか?流石の日本人でもあの熱さのシャワーを問題なく使える人は少ないだろう。

そのような按配でとても不思議なホテルだった。シーツも穴が開くほど古く、床も一部ギシギシするが、スイスの安宿のような薄ぶれた感じは全くないのだ。初期投資をする余裕がないのかもしれないが、こうした山の中で一泊50ユーロを取れば、これで経済効率があるのだろう。



参照:
酔って帰宅そして昼寝無し 2009-07-15 | 暦
熱いイェーガーテェー 2006-01-16 | その他アルコール
by pfaelzerwein | 2014-12-22 04:54 | 料理 | Trackback
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