行進曲、闘争そして歓喜
日曜日の尾根筋での吹雪が、喉に来たことは書いた。翌日に走ってその疲れ具合が分かった。のど飴を舐めて、塩で嗽をして喉の調子はこれ以上悪くはならないようだが、今度は鼻に来て、珍しく駐車場まで行きながら走るのを断念した。氷点下の寒さ以上に体が冷え込んでいる。序に夕食を準備したので、赤ワインで今晩は暖まるだろうか?就寝中に二度三度とトイレに立った。塩気のものを口にして、水気も十分に摂取したからだろうか。ビールは一杯しか飲んでいない。寒くて代謝が十分に行われていなかったのだろうか。
ツアースキー靴「マエストラーレ」を点検した。頂上を目指して歩いた場所もあり、緩い貸しスキーを何度か外したので、傷がついたところもあるが、書かれていたようなバックルのネジや金具が飛んだりは無かった。インナーが綺麗に乾き切るまでに時間が掛かったが、インナーも冷たくなくとても良いと思った。滑りに関しては、スピードさえ押さえていれば全く問題のない靴で、クラシックスキーのレクザムよりもサイドの支えが良いのでカーヴィン技術系の滑りには全く問題がないと思った。滑降で吹っ飛ばす以外はピステでもこれで十分だと感じた。深雪に潜り込んでも雪が入り込むような感じも無くてこの点でも快適である。なによりも自重が軽いので、動作が楽で、軽くて張りのある板と軽い締め具を組み合わせると素晴らしい滑りが出来ると思う。 今回感じたのは、スポーツ医が言及していた、空気椅子の筋力を鍛える必要があることで、大きな標高差の深雪を滑るときには結構堪えると思った。今まで経験した2000M以上に、歩いて登ってきた後の滑りであるからその付加は大分違う。その意味からは購入したコムプレッション靴下は気が付かないながらも乳酸を調整する効果はあったのかもしれない。歩くことでの足の不具合は出なかった。これだけでも天晴である。 鼻をぐずぐずさせながら先日受け取ったCDなどを流している。ヨルダンのパイロットの映像が流れて来た時には、第九の合唱が流れていた。デジタルサウンドで初めて接するベートーヴェンの名曲であるが、そこに響くトルコ行進曲、そして闘争、歓喜。実は、この名曲が日本以外では殆ど演奏されていない事実と名指揮者などが特別な曲として平素仕舞い込んでおく意味がよく分かっていなかった。実際、こうして流している録音も死を目前とした大指揮者の録音であり、そうしたお膳立てのなかで録音されたものなのである。卑近では、ベルリンの壁が開いた云々の記念行事として演奏されている。この曲自体の祝祭的な性格と、なんといっても第四楽章の合唱のテーゼとアンチテーゼの間での止揚がそのまま直截に示されていて、シラーのテクストの合唱が問題となるのである。 日本ではこの名曲が世界中で演奏される分一国だけで賄えるぐらいそれも年末に集中して演奏されている。その社会的な背景には触れないとして、こうしてこの曲に触れてみると、実感としてのトルコ行進曲とその上位にある只唯一の神を考えれば、決して日常茶飯の芸術ではないことが理解できるのではないか。今現在の欧州は、奇しくも、彼のオスマントルコへの不安と似たような状況にあるかもしれない。そのようなときに創作家はどのような仕事をするのか?当時の思想や社会背景を考えれば、こうした芸術作品で手に取るように理解できるのである。なるほど、創作当時、最後のヴィーン包囲からすれば百年ほども経過しているが、現在の西欧が感じるような脅威感よりも、啓蒙思想の中での覚醒を呼び起こす世界観ではあったろう。 こうした実感が、イスラム文化への理解でもあり、欧州連合の賛歌となっているこの名曲の世界観でもある。つまり、その世界観は流石にこの楽聖ですらも晩年になって漸く至った境地であることは間違いない。そのように思い描くと、演繹的にもこの交響曲の構成やイデオロギーがとても分かりやすくなる。今回初めてこの曲のCDを入手してとても分かり易く、期待していた通りのファスビンダーの歌唱も聞けた。流石にLPは、フルトヴェングラーなど何種類かの録音は手元にあるが ― 正直なところフルトヴェングラー指揮の戦中戦後の名演を見聞きして少々その内容に懐疑的になってきているのである、CD規格設定に使われたようにこの一曲が一CDになるのは素晴らしい。それもフォン・カラヤンの録音ではなくてベームの指揮の録音でとてもよかった。全集のそれよりも丹念に揺るぎなく演奏解釈されていて、当時想像されていたようなよれよれとは正反対の出来であった。最も音響的に美しい録音との評価もあるが、イデオロギー的にも明確で、一神教的な不動感は格別である。 日本の平和主義は、今回の一連の事件でも何度も言及されるほど世界的に有名である。しかし、それが日本人のイスラム感と同じように途轍もなく素朴過ぎるのも周知されている。政治的には九条の会などのパシフィズムとして表れているが、より問題なのは文化的にもつまり異文化理解という観点においてもあまりにも素朴過ぎるのは、学識経験者などと呼ばれる人の発言の影響などを見ていても明らかなのだ。様々な点から日本が普通の国として世界的に大きな発言力を得ることは不可能なのである。 参照: 「火炙り」や「尊師の説教」など 2015-02-05 | 歴史・時事 スキーツアー事始めの眠り 2015-02-04 | アウトドーア・環境
by pfaelzerwein
| 2015-02-06 04:00
| 文化一般
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