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石橋を叩いての樽試飲

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ナーヘのデンノッフ醸造所の試飲会にはじめて参加した。予想通りの賑わいで、明らかにシェンレーバー醸造所よりも顧客数が多そうだ。理由は知らないが評判がよいのだろう。ケルンやその他方々から来ているようで、専門家も沢山来ていたようだ。レープホルツ醸造所と勝るとも劣らない賑わいであり、あの山中にあれだけの人が押し寄せる権威は大したものだ。

ワイン街道からは100KMもないのでロベルト・ヴァイル醸造所に行くよりも近い。偶々工事でアウトバーンが込んでいて、回り道をしたが、それでも80分は掛からなかった。帰りは50分ぐらいだった。道を覚えてしまえばシェーンレバー醸造所よりも大分身近である。

さて、リースリングばかりを集中して試飲した。初めて口にするグーツリースリングは、その価格8,90ユーロが安いか高いかはなんともいえない。ただはっきりしているのはその価値相当のリースリングであることで、決してそれ以上のものではなかった。その意味からして少々肩透かしだった。シェンレーバー醸造所のグーツリンスリングの価値はまだあるだろう。

要するにVDPの進めてきたグーツリースリング、オルツリースリング、PC、GCはもはやブルゴーニュのそれとなんら変わらなくなった。リースリングもピノノワール同様それなりの質や満足感を得ようとすれば最低11ユーロ以上は出さないと愛飲は出来なくなったという事である。比較は難しいが、これならばモスバッハー醸造所のヘアゴットザッカーやビュルクリン・ヴォルフ醸造所のグーツリースリングの方が価値があるだろう。ワインの地所の質が全然違う。

次に「トーンシファー」と称する12,50ユーロを試す。これは土壌の名前を名乗るだけにそれなりにミネラル風味があって、だからといってトニー・ヨースト醸造所などのミッテルラインの下品さもない。2014年産はシュペートレーゼ系であると語られているが、漸くこの価格帯になって楽しめるうリースリングとなっている。しかし、この価格ならばザールの醸造所の品のあるミネラルや酸の方が価値があるだろう。

その次のクロイツナッハの「カーレンベルク」も更にコクがある。そしてその酸が結構前に出てくる。時間を置けばよくなるのかもしれないが、現時点では16,80ユーロの価値はないと感じた。これならば間違いなく、将来性もありそうなミュラー・カトワール醸造所のビュルガーガルテンがよい。

ロクスハイマーの「ホェーレンプファート」は、やや丸い感じで18,80ユーロの出来を感じさせたが、残糖が多めで、ペーター・ラウワー醸造所のアイラークップのウンターステンベルクと比較したい。実際の残糖は少ないのだろうが、酸が丸過ぎるのだ。どうも雑食砂岩ということだが赤みのあるということでは南ワイン街道にも似ている。そのとんがり感を隠すような醸造なので殆ど評価できなかった。

そして、先代や代替わりした息子そのお母さんなどの話を聞きながら、グローセスゲヴェックスの価値定めをしていると、そんなことなら試せばよいと先代がのたまう。こちらは樽試飲ができることなど知らなかった。さて、ここからが本番である。要するにその三つの地所がこの醸造所の本当のワインである。正直それ以外はどうでもよいと感じた。

さて最初は、昨年ただ唯一購入できたフェルツェンベルクの「フェルツェンテュルムヘン」である。これは正月に一本開けたが火山性の土壌とはいいながら決してどぎつい味とはならずにスパイシーさと可也繊細な酸が楽しめたのであった。それに比較すると2014年産は酸も荒く、スパイシーさがないようで、樽試飲とはいいながら物足りなかった。他の顧客もそう感じたようで飲み頃を尋ねていたが、「時間が掛かる」と息子が言い訳するので、私は「13年物は一概に楽しめた」と反論した。14年物はクラッシックという説明であったが、その違いも比べてみないと分からない。今年は一本あれば十分だ。

二つ目は「デルヒェン」で、ポルフィールということで、それなりの繊細さや構築感もあったが、気に入ったのは最後に立ち上る果実の幻で、これはとてもチャーミングだと思った。先代もそれは認めていたので、瓶熟成も上手くいくかもしれない。三本パイロットワインとして注文しよう。

三つ目は、この醸造所最高の地所「ヘルマンスへーレ」で、そこの醸造所も有名であるが、鞍部のような場所に広がる地所である。作業効率はよさそうだが、それだけの価格を取れるのは何故か。グレー系のスレート土壌らしいが、そこに隣の火山性のそれが混ざることから複雑性を獲得しているようで、丁度プファルツに当てはめるとキルヘンシュトックの複合性のようなものらしい。実際に樽試飲すると、瓶熟成で広がってくるものは可也ありそうで、シェーンレーバー醸造所のヘレンベルクなどとは比較にならない複雑味がある。しかしその価格39,50ユーロは2014年産にそこまでの品質があるかどうか分からない。先ずは二本位確保しておいて瓶熟成をさせてみよう。

甘口もゴールトカプセルと称するアウスレーゼを試したが、9Gと僅かな酸で糖もそれほどではなかった。アイスヴァインの収穫できなかった2014年産であり、甘口に関しては特筆すべき年度ではなかったろう。但し、ヘルマンスヘーレのテロワーが綺麗に出ていて、流石に安物の甘口とは一線を画している。但しそれほどのパワーがあるわけでないのでハーフサイズで27,50ユーロもするなら、グローセスゲヴェックスの方がはるかに価値が高い。

その他のゲストやゲスト醸造所については改めて述べる価値がありそうだ。思いがけない人にも出会う。それにしてもナーヘ川に掛かる古い石橋を渡って町に入るその鄙びた雰囲気は、試飲会の招待状に静かな環境で試飲と書いてある通りだ。そこに足を運ぶことが必ずしも億劫ではない醸造所、但し購入するワインの在庫があればということになる。2014年もそれほど収穫量は多くはないようだった。



参照:
氷葡萄酒の名匠のお屠蘇 2015-01-03 | ワイン
ナーヘの谷へ戻る旅 2014-08-14 | 試飲百景
還元法は十五年も前のこと 2015-05-06 | 試飲百景
by pfaelzerwein | 2015-06-07 20:27 | 試飲百景 | Trackback
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