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退位の緊急事態への一石

明仁天皇の退位発言のニュースは瞬時に世界中を駆け巡った。とても大きなニュースだった。裕仁天皇の逝去よりも意味があるかもしれない。東京の都知事選を巡って、鳥越俊太郎が立候補したこともとても政治的な意味合いが強かったが、またここで明仁天皇が一石を投じたとみる。いづれにしても法の改正が必要となって議論となる。そして平成の年号が終わりを告げる。否応にも国民は意識しなければいけない。

フランクフルターアルゲマイネ新聞によると、このことで小泉首相時代に話題となっていた女性の継承権が、安倍首相の下で封じられていたが、再び話題となるという見方である。既に政権は議論を呼び起こさないように沈静化を狙っているようだが、新聞が書くように参議院選挙を受けての改憲の動きに一石を投じることには違いないだろう。

新聞はここでも再び繰り返す。なぜこれほどまでに明仁に人気があるのか。そして安倍の行いと反対のシグナルを国民に、世界に送り続けている事例を挙げる。その日暮しをしている市井の人々も何かに気がつかなければいけないということだ。

鳥越氏の立候補は、謂われるところの石田純一の立候補と同じく、緊急事態に当たっての身を挺した行動と映っている。実際に、立候補を断念した宇都宮健児の会見を見ていると、どうもあの手の市井の人たちには今置かれている事情をよく呑み込んでいないのが知れるのである。ナチスの権力掌握までの院内の活動を見ていても、社会主義者や共産主義者の方が頭がイデオロギーに凝り固まっていて、状況が見えず、イザというときに全く機能しなかったのである。小理屈を捻っているお頭を信じていては大変なことになる。

流石に大阪のやくざ政党の連中の方が敏感に反応していて面白い。東京都知事が彼らが挙げる地方分権の点で協調して動かない限り、権力の集中とその掌握の魂胆のための建前が立たなくなるからである ― まるで囲碁か何かの一石のようだ。ヤフーなどの見出しに未だに公明党が九条云々とかで改憲は出来ないような誤魔化しが書いてあるが、まさしくそれは「直ちに健康には影響がない」と嘯いた311時の枝野幹事長などの出まかせと全く変わらない。鳥越氏が東京知事となることで、大阪の連中の大義名分が整えにくくなり、地方分権を煙幕に使う改憲の提議が難しくなる。

宇都宮氏は弁護士としてとても立派な業績を残しており、前回も立候補に必要な支持を集めていたが、その現状の緊急事態への認識が全く欠如しているようで、典型的な地方の秀才が東大生になったそのままの人生を送っているかのように見える。それでも氏が尊敬に値するのは、ああした公式な場面で自らのことを「田舎者」と言い切れることである。自らの最もコムプレックスであるところをさりげなく発信して、それを自らの強みとする強靭な人間性には感服しかない。政治家としての適正には色々あるが、鳥越氏も病気持ちであり、任期を全うするかどうかも分からないので、まだまだ見た目以上に実年齢は若いことであり、今後に期待を繋ぐのではなかろうか。今回の英断で、今後は間違いなく、今まで以上に広範な支援を得ることだろう。

それにしても鳥越氏の当選への道程はこれまたとても大変なことだと誰もが感じる。同じく危機感を持つ市民は積極的に係わらなければいけないのだろうが、あの細川擁立の時に似て選挙戦が空回りしそうな気配もある。反原発や改憲は決して都知事選の争点にはならないということである。兎に角、一矢を報いることが可能ならば、皆がこれが最後のチャンスと思って取り組まなければいけないであろう。



参照:
Ein Abdanken ist nicht vorgesehen, Patrick Welter, FAZ vom 14.7.2016
「緊急事態」の今後 2016-01-02 | 歴史・時事
年末になってスカッと 2015-12-31 | 歴史・時事
by pfaelzerwein | 2016-07-14 17:27 | 歴史・時事 | Trackback
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