業界のダークホース

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クラシックオタクな話題から気が付いたことがある。先日も触れた日本で活躍する指揮者に関してだ。その中で「パーヴォ・ヤルヴィはフォンカラヤンに匹敵する」のではないかと書いたが、私は昭和時代の登壇者しか知らない。僅かにN饗をフランクフルトに連れてきたMeTooのデュトワからその進展を確かめただけだった ― 確かに成長はしていたが中声部どころか第二ヴァイオリンも疎かで一流管弦楽団ではなかったのを確認して、そしてそれは昨年の中継放送からヤルヴィ指揮の下で解決されていることも確認した。ここでの関心ごとは、日本の管弦楽団の水準ではなくてそこに登場する指揮者陣の水準である。

恐らく歴史的にも今まで日本の交響楽団を指揮した中では、ヴァインガルトナー、カラヤン、ブーレーズ、小澤、マゼールなどがトップクラスの指揮者ではないかと思う。ザヴァリッシュも晩年フィラデルフィアの監督であったからやはり辛うじてそこに含まれるかもしれない。カイルベルトなどはカペルマイスタークラスなので完全に格落ちだろう。勿論その経験や実力や音楽性をその格が示すのではないが、日本で人気のあるサロネンの指揮者としての格を考えると興味深かった。音楽監督として「ロスフィル止まり」の表現が妥当かどうかは分からないが、やはりその上のリーグとは何もかも違うだろう。

あまり気にしたことは無かったのだが、名門管弦楽団がどのようなプロセスで監督を選ぶかは興味深く、その最も有名なのはベルリンのフィルハーモニカーにおいてだ。先ごろは発表された次期シーズンの客演指揮者選択においても嘗ての様なメディアの介入は殆ど感じられなくなっている。その政治力も経済力も無いからで、精々有力マネージメント会社の力関係ぐらいだろうか。それだけに、所謂業界人の選択というのがとても興味深く思えるようになってきた。想像するに楽団理事局から推薦名簿が出されて、ツェッチマンが入ってペトレンコの承認・選考を得る形になっているのではなかろうか?いずれにしても名門の管弦楽団が、特に著名スポーツ選手並みに報酬を出す合衆国の楽団がただ単にオーナーや実力者の好き嫌いで人選をする筈はない筈だ。要するにその報酬に見合った見返りを合理的に厳密に算出している選出しているに違いない。それが業界の選択という事になる。そして現在の様に各楽団を見渡してもメディアの影響などは微々たるものになって来ている。だからやはりその選択はオタクにとってももっと関心を集めてもおかしくないものだろう。同時にその業界での地位というものが語るものは少なくない。

日本で人気のフリュサ指揮でゲルハーハ―との共演が話題になっていたが、先週バーデンバーデンでバムベルク交響楽団との演奏会があったのに気が付かなかった。亡命チェコドイツ人の交響楽団が前身の楽団であるが、ローカルのドサ周り管弦楽団であったのには変わりなく、特に最近の演奏の放送録音は可成り技術的に落ちていたので興味が失せていたからだ。そして来年のバーデンバーデンでの登場も人気の無い楽団だけに二階席を閉鎖して開かれているために22ユーロでいい席が買えない。それならばバーデンバーデンに出かけるまでもない。同じ指揮者でも他の楽団の方が良いかもしれない。今日本旅行中のようだ。

日本の呼び業者も手当たり次第に話題の人をリクルートしているようで、玉石混合なのだが、本当に実力があったり、それほど話題の人は呼ばれていないようだ。そこで最初の命題に戻って、ダークホースのヤルヴィを挙げたのだった。現時点では誰も彼が合衆国のトップクラスの監督になるなんて予想もしていないかもしれないが、先日のバイロイトでの指揮を観ていると、まだまだこれからキャリアを積んでいく人だと思った。クリーヴランドなどにも合いそうだが、コンセルトヘボーなどでも良いかもしれない。そう言えば上のフュルサがクリーヴランドでスークの交響曲を先月振っていた。オンデマンドになったら聞いてみたい。しかし事務所が強力な指揮者である事も差し引かなければいけないだろう。

上の論法で進めると、あの世界中で人気の無いヴァルサー・メストというリンツ出身の指揮者は間違いなく現在五本の指に入る地位にいる人で ― 同じヴィーンの楽長になってもジョルダンが同じ地位につけるなんて考えられないことからもその地位の意味が分るだろう ―、その辺りの「スター指揮者」よりは当然なこと、それどころかシャイ―やヤンソンスなんかよりも上の立場の実力者となる。何時まで監督でいるのかなどにも拠るが、一般市場はそれにどれほど同意するだろうか。ヴィーナーフィルハーモニカーとの秋の日本公演の売れ行きが注目される。特にランラン絡みなどでどうなるのだろうか。そろそろ日本人も座付き管弦楽団の力量には気が付いて来た筈だ。それにしても通常公演も高過ぎるが、大ホールでの二流奏者の室内楽が18000円とはサントリーらしくない恥さらしな商売だ。3600円自由席で充分だろう。



参照:
「ヤルヴィは一つの現象」 2018-05-13 | 文化一般
元号廃止などと昔話 2018-05-04 | 文化一般


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by pfaelzerwein | 2018-05-16 03:16 | 雑感 | Trackback
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