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芸術を感じる管弦楽の響き

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今夜は二つ目のプログラムのロンドンからの中継だ。混同するといけないのでその同じプログラムのルツェルンでの演奏を纏めておこう。四月から数えて四番目の本番だった。だからとても期待した。

その通り、こちらもフランツ・シュミットの曲を中心にお勉強して一音も聞き洩らさずにと齧りついた。それでも自身の能力の限界もあり、二日目となると前夜の余韻を抱えたままで、結局出たとこ勝負の心意気で挑んだのだった。

既に書いたように、ガイダンスや中継放送の批評にある通り、四番交響曲ハ長調は圧倒的だった。それでもまだまだこちらが消化仕切れないほどの味わいがあり、このコンビでの演奏でいつかまた聞くことになるのかとも思った。ピアノ四手の編曲版の楽譜しか見ていなかったので生で観ていると、デジタルコンサートホールでは映し切れていない楽器間の繋がりが取り分け面白かった。それまでは、如何にも楽士さん出身の、後に指揮者となるフォンカラヤンの教授の書いたオーケストレーションという印象が強かったが、それに違わずも、どうして受け渡しや中声部での書法も中々光っている。確かヴィーンのフィルハーモニカーのチェロ奏者だったが、ヴィオラへの繋がりも良く、現在のベルリンのフィルハーモニカーにはとても良い練習教材だ。そして私達聴衆への教育効果も唯ものではなかったと思う。聴衆としてペトレンコ先生に教育されているのを実感した人も少なくないであろう。こういう曲が独墺の音楽の歴史から、やや時代遅れの創作として生じて、所謂後期ロマンティシズムにカテゴライズされるのを認識するのがよい。丁度碁石のようにこの作品がペトレンコ体制のベルリン時代の前にぽつんと置かれる意味を噛みしめる。

前日の演奏に対する批評にもカリスマ的とあるように、フィルハーモニカーの特徴である高弦の鋼のような響きは前日のシュトラウス二曲目でも顕著だったが、ここでは更に闊達に、それこそ三楽章の対位法だけでなくコムパクトに見通し良くなっていた。全奏の響きは言及されていたが、そのホールトーンのプレゼンスなどこれもまたステレオでは収録不可能なもので、サランドでもなかなか再生が難しい音響だと思った。

しかし個人的には、「ラ・ぺリ」には圧倒的な場面があった。あの全奏は今までマーラーやグレの歌やストラヴィンスキーなどで聞いた響きとは異なる未知のものだった。これだけで価値があった。ザルツブルクに続いて二回目の本番のファンファーレもオマケ以上の音響だったが、そこから弱音で続けて始まる構成も得難かった。なるほどラトルのベルリオーズなどにおけるフランス音楽も素晴らしかったのだが、このフィルハーモニカーの合奏を鳴らし切った響きは、対称的な弦のパリ管などのフランスの一流管弦楽団のそれとは異なるとても実体感のある響きで、それがこの曲の本質ではないかとも感じた。「管弦楽の響きに芸術を感じた数少ない経験」だった。その感動が最後まで続いていたので思わずフライング気味の拍手につられた。この曲が想定以上に頭に入らずに、結局車を地下駐車場に入れるまで、トリプシェンのヴァークナー博物館の駐車スペースに車を停めて一時間半ほどお勉強していたのだ。そして終わると腹が減って、昼食に200グラム以上のアンテルコーテを詰め込んだ。その影響はガイダンス中の眠気になったのだが、響く音響で覚醒した。放送の録音では到底予期出来ぬ効果だった。

二曲目のプロコフィエフは、最も映像や録音で認識していたものを逸脱してはいなかった。但し、評論家が語っていたように、ワンのピアノでのヴェルビエールやチューリッヒでの演奏とは比較にならないだけでなく、アバド指揮でよりも遥かに室内楽的でというのは正しい。あれだけ何回も合わせていれば、ペトレンコ指揮の実力として当然ではある。残念ながらユジャ・ワンのピアノは今まで聞いたものの中で一番の出来ではなく、先日中継されたザルツブルクでのリサ・バティアスシュヴィリのチャイコフスキーのように争ってでも一楽章の終わりで拍手しようとは思わなかった。ブラックマネージメントかどうか知らないが仕事をさせられ過ぎで、折角マルタ・アルゲリッチと並び称されても、練習代わりにコンサートで弾かれては困る ― ランランの穴を埋める便利屋さんとして重宝された面もあるだろうが、そのランランのカムバックがやはりもはや以前のパワーが無いこととして扱われる以上、現在の人気やその市場では今の立場を続けれれなくなることは分かっている。もう少し腰を落ち着けて弾いて欲しい。



参照:
独墺音楽のコムパクト 2018-09-01 | マスメディア批評
何と、勧進帳を読めと 2018-08-28 | 文化一般



by pfaelzerwein | 2018-09-01 23:31 | | Trackback
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