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初心に帰る爽快さ

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日曜日の朝はヴィーンからの放送だ。先月26日にザルツブルクの祝祭大劇場で開かれたベルリナーフィルハーモニカーの演奏会の中継録音が初めて流される。あのベルリナーシュロースの明くる日日曜日の演奏会で、とても興味深い。私は水曜日の同じプログラムを聞いたので、その間の錬成度を聞ける。一曲目から上手く録音出来るように、ウォーミングアップを入れて、準備しておこう。それで来年の三月四月までは、ヴィーンでの客演指揮はあるが、キリル・ペトレンコは再びバイエルンの音楽監督に戻る。その間に来年のベルリンでの開幕のプログラムも非正式ながら発表される。

承前)さて来週のルツェルン行きは断念したが、とてもいい印象を得たのは前座コンサートの40MINと題されるシリーズで、無料コンサートである。それも20世紀後半の創作が演奏されて、当夜もラトルの音頭取りで、三つの楽団を合わせて、三人の指揮者が振るシュトックハウゼン作曲の「グルッペン」が演奏された。本来ならば祝祭期間のアカデミーの指揮者が入って、ロンドンで既に演奏したらしいように聞かせてくれる予定だった。それが前日に急遽アカデミーの指揮を辞任という事で、当日は第一回音合わせとなった。ラトルがお話ししていたように、この曲は1957年初演という事で「ウェストサイドストーリー」と同じらしい。そこで、一時間近く並んだお客さんから「オー」と声が漏れた。
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このシリーズの企画は、普段はコンサートなどには訪れないような人々に服装コードゼロで解放して、兎に角雰囲気だけでも体験して貰おうというものらしい。オペラなどでは総稽古を開放しているようなフェスティヴァルは多いが、このプログラム選は得難いと思った。そして当夜のメインであるサイモン・ラトル以上にこのお役目を果たす宣伝マンはいない。そのお話し自体はいつもの感じだったが、日本へ初演奏旅行の時に少し言葉を交わした雰囲気を思い出した。舞台との距離感だけで無く、彼の眼を覗き込めて、とても懐かしい気持ちになった。

そして、ベルリンからロンドンに活動を移して、こうしたプログラムを進めるときの生き生きとした表情やその指揮振りを見て、嘗て彼が我々を魅了したそれがフラッシュバックの如く蘇り現実になっているのを感じた。上のような事情で飛び入りした韓国人の指揮者を見つめる表情や指示の出し方など、この人がバーミンガムで一から叩き上げて、そしてベルリンでも同じように指導していたのを合点した。曲が曲だけにその点描的な打ちの正確さや要求など、この指揮者の本質のようなものを見せられた。本人も回想として、ホームグラウンドで少年ハーディングの先生などとこの曲を合わせた思い出話も交えて、ご本人自身その原点へと遡っているような思考活動がそこあるようで、三十年ほど前に共に戻っているような不思議な気がした。楽譜の指示通りの声を出しての譜読みも見せ、歌う指揮者ハーニンガムの様にはいかないとか、内容満載の40分だった。

この様子ならばロンドン饗も毎年同じ時期に来そうなので、ラトルには前世紀後半のプログラムをやって欲しいと思う。この既にARDで優勝していて、現在ロンドン饗の主席の女性オボーイストがなぜこのアカデミーに来ていたか、そのブーレーズの指導で新しい音楽を学びたかったかなどのインタヴューもあった。サー・サイモン・ラトルの知名度とそのPC能力を極力利用して、この試みが大きく発展して欲しいと切に思った。形になるようならば毎年通っても良い。私自身も初心に帰った気持ちになって、とても嬉しい。

それにしても、前任者と後任者の二人の指揮者で展開してくれた領域は少なくとも近代管弦楽団に関してのアルファーからオメガで、そこに全てが網羅される。キリル・ペトレンコの独墺音楽の神髄へと迫る試みも事前に想定していていた領域を超えて西洋音楽の本質へと迫っていて美学的にもエポックメーキングとなりそうであったが、まさか前任者がここまで熱意と本気さでシュトックハウゼン以降へとその活動を展開するとは思ってもみなかった。ルツェルンとしては形にしたいだろう、バーデンバーデンでは一体何が出来るだろうか。(続く)


参照:
職人魂に火をつける人 2018-08-27 | 文化一般
走馬灯のような時間 2018-09-06 | 生活


by pfaelzerwein | 2018-09-09 00:04 | 文化一般 | Trackback
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