一先ず清濁併せ呑もう既に第一報は書いているので、俯瞰的なことを思う。このコンサートの目的であるアピールは、とても考慮した形で発せられた。例えばアジア系の楽員やいつもいい味を出している二番フルートの女性などは弄らずに、寧ろ奥に隠す形で、外国人として挙げられたのもスイス人やフランス人やイタリア人だった。これは、如何にその他の外国人が危険に曝される可能性があるとかという危機感の裏返しで、事の深刻さを強調していた。また少なくともオーボエのフランス女性も乗っていなかったので、ドレスデンではどうなるか知らないが、この企画のあり方が知れる事象だった。当初から伝えられていたように、楽員内ではこのアピールに関しての抵抗は想定していたよりも薄くて、あっても少数派であったのではないかと感じた。これは印象である。 ブロムシュテット爺の講話の内容とプログラム選択への説明は想定内であったが、この人が麻薬の話しをするとどうしてもバーンスタインについて語った内容も思い出す。バーンスタインの全てを受け入れての発言だった訳で、逆にこの人のその禁欲的な人間性が浮かび上がる。そのベルリオーズの幻想交響曲の内容と同時に作曲家の所感を扱った当晩のプログラムの内容に交えて、簡易ながらもベートーヴェン若しくはメンデルスゾーンと対比させることでの古典からロマン派への流れ、もう一つそこにトスカニーニとフルトヴェングラーを対比させていて、この指揮者のその見解がそこからも見える。音楽学者志向だったこの指揮者の本望であり、それがこのコンサートのアピールとして出された事になる。 つまり、モットー自体は「今日よりも少しでも先に進む明日へ」の進歩主義がそこにあるのだが、このキリスト者はそれを錦の御旗とはしない。伝道師にありがちな押し付けがましさをそこに感じさせない。それどころか、異質なものまでを受け入れる清濁併せ呑むの度量を示している。これこそ当該の社会事象を解決する唯一の選択なのである。深読みすれば、あのAfDの連中に踊らされている良心的な市民はその寛容性に欠けていると言っている。ここで第二回のドレスデンでのブラームスのプログラムとその第二回講話の内容が推測可能となる。 折角ゲヴァントハウスとベルリンの両方で振ったフルトヴェングラーへの言及があったので、その響きなど音楽オタク話題にも触れよう。ブロムシュテットは、予てからそれをして全てがロマン的な響きを求めることにあったとそのフルトヴェングラーの音響重視を示唆しているが、この夏以降演奏界のトレンドな話題となったのがまさしくその響きの意味を再考することにあった。もう一つ挙げられたコムパクトな響きは、残念ながらブロムシュテット指揮には求められないが、それが出来ていた指揮者は意外に少ないことにも気が付く。ベームの後の世代ではシュタインとかザヴァリッシュとかはどうだろうか。最近ではラトルが意外に出来ていたのではなかろうか、ここでもそれに対するようにフルトヴェングラーのロマンの響きが挙がるのかも知れない。ヨアヒム・カイザー教授が言っていたように、戦後のフルトヴェングラーにおいては緩む時があったとするのはまさにこれが上手く行ったり行かなかったりの事に相当するだろう。後年まで「指輪」を苦手としていたのにも関係するかもしれない。ある意味古典的若しくは新古典的な音楽語法にも関連するだろうか。 要するにペトレンコ指揮の新生べルリナーフィルハーモニカーに求められているのはこの両面である。そのコムパクトさに関しては問題は少ないが、如何にドイツのサウンドを確立して行くかにある。それで思い出したが、ライプチッヒの会場のプレス席には、「ペトレンコはユダヤの小さなグノーム如きで、アルベリヒのようだ」と罵ったヴェルト新聞のヘイトバカ男がいた。そして喝采していた。まさにあの男こそが反ユダヤ主義の人種主義者だ。あの会場のスタンディングオヴェーションには偽善がありその濁が混ざっていて如何に蒸留水ではないかが証明されている。一先ず清濁併せ呑んでおこう。 参照: 少しだけでも良い明日に! 2018-09-16 | 文化一般 コールタールピッチ 2004-12-29 | 歴史・時事 ふれなければいけない話題 2015-06-29 | マスメディア批評
by pfaelzerwein
| 2018-09-16 20:13
| 音
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