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道に迷って思わぬ出会い

道に迷って思わぬ出会い_d0127795_7151597.jpgここ十日ほどの間に、十種類ほどの様々なワインを試した。

試飲後購入して、自宅にて栓を抜いて、再び本格的に試したワインがある。その中には、先日ラインガウで試飲してここに記した二本が含まれる。一本は、リッターヴァインであるが廉い格下の醸造所のものに比べて二倍の価格である。当日の試飲会では、初面識のおばさんが盛んに勧めたものである。

確かにその辛口でストレートな味覚は香ばしさと含めて、購入の価値ある日常消費用ワインであるのは確かめられた。しかし、食事にそれを愉しむとなると、やはり魅力が薄い。何よりもミネラル風味はあるが、その味の複雑さがないのが、口を飽きらせる。ここでも何度か主張しているが、ワインの味の繊細さを意識させないかぎり、食事の味の繊細さをも意識させない。つまり、時間差による味の減衰がないことにはやはり良き食事の相伴とはならないのである。その意味から、邪魔をしないというだけでは、この価格では買えない。我々は日頃、もっと 旨 い ものを食しているのだ。

もう一つは、同じ試飲会で高評価をしたファインヘルブと言う辛口でも甘口でもないカテゴリーのものであるが、こちらはその価格に比べて旨味もあり、後口も殆ど甘みが残らないのが確かめられた。食事もパスタ類でも何でもいける感じで、またその旨味を単独で楽しむのにも問題はない。

2006年度産日常消費ワインを買い足すついでに、夏の間に成長したワインを勧めて貰った。ダイデスハイム産のラインヘーレの地所からの辛口リースリングである。その地所の嘗ての印象は、既に記されているが、他の醸造所のものも含めてあまり好みのものでないが、土壌の個性が強かった。そして今回飲むと他のワインと同じようにミネラル風味が前面に押し出てきていて、全体のバランス振りが大きくなっていたので、購入する。食事とこれを楽しむと若干甘みが強く、半辛口領域に近い印象を受ける。なるほど店の女性が勧めた良さを改めて見出す。これはまだ暫らく成長するだろう。その反面、糖価の限界が舌で測れたので、決して甘いものが旨く感じるようになっている訳ではない己の味覚を確かめる。

更にその場で二種類のグランクリュを試飲出来た。一つはダイデスハイムのキーセルベルクで、ここでは今年はこの地所からの他の醸造所のキャビネットを賞賛している。それに比べると、当然のことながら晩摘みなのだが、それだけ土壌のもっている成分の不足を感じさせた。アルコール度が上がり、それなりの酸と濃くがあると、どうしても拮抗する風味や味が欲しくなる。元来その土壌の個性から果実風味に抑制が効いているので、ある種の清涼感か清明さが欲しい。

もう一本は、ウンゲホイヤーであるが、これも他の名門醸造所がこの地所から半額ほどのキャビネットで一本筋の通ったストラディヴァリウスような清澄さを出していることからすると、ヴォリューム感だけでなくそうした強い個性に欠けるのである。両者ともまだ開いていないとしても、その差は顕著であり、最上級ランクのワインに関しては尚一層の成果を期待をしたい。

その足で、名門醸造所を訪ねると、めぼしいものは殆ど売り切れていて、ただダイデスハイム産のヘアゴットザッカーの辛口キャビネットに興味を持った。これは何度も試飲しているが、売れ残っているのである。店先では幾らか林檎香を感じて家に持ち帰り飲んだが、味が無く新鮮ながらかなり疲れた印象を持った。面白くないワインはやはり売れ残る。上記の醸造所のヘアゴットザッカーが、果実風味に溢れ爽やかさがあり、最も早く売りきれてしまったのとは対象的である。

しかし、試飲無しの購入を躊躇して、粘って、探させて試飲出来た唯一つ売れ残っていたグランクリュは、大変素晴らしかった。瓶を開けて暫らく経っているにも拘らず、その開いていないワインから大きな開花を予想させた。あと二年ぐらいとする評価は正しく、その凝縮した細身のホーヘンモルゲンは、そのときには素晴らしいワインとなっているだろう。それが売れ残っていたのは興味深い。

さて買い足したリースリングは、なぜか醸造所から取ってきて一本目を開けると再び魅了されてしまうのである。そのミネラル風味と酸は、夏以後は楽しめないだろうと思っていたのだが、それなりの味の奥行きを見せてくれる。毎日顔を合わせていて日常生活に疲れた異性同士が、旅に出て道に迷い二人がはぐれて、捜し求めているうちにふと向こうからやってくるのを見た瞬間、再びその良さに惚れ込んでしまうようなものだろうか?
by pfaelzerwein | 2007-10-08 07:17 | 試飲百景 | Trackback
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