環境世界的発展史観
EUの特にドイツはの環境・エネルギー政策は理想主義的で、現実的ではないとするのが、日本国外務省の見解のようだ。川崎二郎代議士は、メルケル首相の英断に感服しながら、ドイツのこの分野での指導的立場を、嘗てのように日本の名人技でもってドイツを真似しなければいけないとして、ベルリン政府の政策を全面的に支援したいとしている。しかし、日本国外務省は、上のような評価をしており、不公平な京都議定書さえ誤りであったとして、「現実政策」へと進み出ていると言う。
理想主義を批判するのは理解出来るのだが、この問題は背水の陣で挑んだ緊急の課題であった訳で、先ず何はさて置きはじめるかはじめないかの問題ではなかったのか?これも、将来とも歴史的に判断が下されるされる問題であり、中国人やインド人や一部の米国人と共にもしくは理想主義者か、どちらかが責任を取らなければいけない。 しかし、こうした「責任ある判断」を端から否定するような思考方法を、日本語のBLOGを見ると、歴史家と自ら名乗るような人物が表明している。そこに、どれほど深遠な歴史観や哲学が存在するかは判らないが、その如何にも中立的で学術的に見せ掛けた態度 ― 唯物論の反転焼き直しなのであるが ― には、全く修正主義者と同じような姿を見るのである。つまり、「歴史はその当時の観察と判断を検証しなければ、その時の判断と行いを正しく評価できない」と言う至極常識的な言明は、現在の観察者つまり語り手の視座を上手く消そうとする魂胆でもあり、歴史的な時間の経過を通した現在立脚しているその結果を都合良く無視している。つまり、どのような判断にも将来の責任を逃れることの出来る口実を作っていて、そうなれば歴史の意味さえ無くなるのである。そして、過去から現在の歴史を直視することなく、再び同じ過ちを繰り返す愚行となる可能性が甚大なのである。余談ながら、先日プーティン大統領が、その非民主的な国内運営を棚に上げて、「核戦争を起した国は一つしかない」と、ブッシュ政権の第三次世界大戦を避けるためのイラン侵攻を否定する言葉には、その歴史の真実がある。 しかし、どのような歴史観が東京の外務省に蔓延しているのだろう?同じような思考方法は、先週報道された、ハンガリー貴族ガスチョン家に嫁入りした当時世界一の工業家ティッセン鉄工所の娘マルギットやティッセンファミリーの罪の追及には、甚だしく当てはまらない。手短に言うと、彼女は、オーストリア国境に近い城を、赤軍が進撃してくる最後の最後まで護ったのだが、地元ナチス関係者へのその最後の慰労パーティーで、城の地下に牢獄されていた二百人もの極度に衰弱したユダヤ人強制労働者を棒などで殴り痛めつけたうえ銃で処刑する余興が催されたと言う事実が、今再び大きな話題となっている。そうした事実と共に、共産党政権下で起訴されて、本人は父親が戦時中に行なったようにスイスで悠々自適の生活を送りながら一味を囲い、逃した事とその後も家族の虐殺への関わりが未だに明白になっていない事を纏めた書籍のドイツ語版がシュプリンガー社からをなかなか出版されない経緯などが新聞に報告されている。 要するに、上のような修正主義者は、こうした事象を見て、その証拠の吟味において議論の余地がないがと見ると、今度はその行為自体の正統性とか当時の社会情勢を主張するようだ。つまりである、それら修正主義者は、「ユダヤ人は滅亡されなければいけない」とした当時の事情を尊重して、その行為をも正当化しようと言うのだろう。 しかし、この記事を扱ったターゲス・シュピーゲルは、マルキストの発展史観をもって、既にハンガリーでかたがついていた事件の「関与のその証拠」に拘るのである。そして、FAZの記事をドイツジャーナリズムの反乱かと揶揄する。そして、これら発展史観の裏返しにこそ修正主義者の思考が存在している事をここに顕著に表わしている。 我々は、何れにせよ、我々の現在からしかその過去を観る事しか出来ないので、自然法信奉者で無くとも、死者や敗者は語る術を何ももたないのを知っている。そして、史的唯物主義でも歴史修正主義でもないところに、最も重要な核心となる世界観があり、それが上の外務省の判断に活かされていないように思われるが仕方ない。なぜならば役人に政治哲学を求めるのは間違いだからである。 参照: „Kyoto war ein Fehler“ Klaus-Dieter Frankenberger, FAZ vom 23.10.07 „Die Gastgeberin der Hölle“ David R. L. Litchfield, FAZ vom 18.10.2007 „Was wusste Thyssen?“ Tagesspiegel vom 19.10.2007 高みから深淵を覗き込む [ 文学・思想 ] / 2006-03-13 ミニスカートを下から覗く [ 文化一般 ] / 2007-09-17
by pfaelzerwein
| 2007-10-25 03:12
| 歴史・時事
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