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ボルドーの最も美い一角

98年産のサンテミリオンとメドックを三種類飲んだ。98年は酸が強く、特に前者は良い年とされている。

一つ目のワインは、瓶詰め行程で飲まして貰った事もある大きな名門シャトー産であるが、フルーティで混ぜ物のない新鮮味がなんとも杯を進めるワインである。メルローをを中心にカベルネとマルベックが同量含まれている。二年間の熟成なのだが、瓶詰め時に飲ませて貰った味の新鮮さは未だに忘れ難い。

カベルネ・フランなどが入っていない事からタンニンの渋みは初めから殆どなかったのだが、購入当初はやはりどうも新鮮すぎてワインらしい味がしなかった。全二ダース購入したから、まだ二十本近くは在庫があるに違いない。そして今回試してみて、ようやくその酸味と果実風味が拮抗してワインらしくなってきたのを感じた。そろそろ飲み頃は間違いないのだが、次ぎはブルゴーニュに買い付けにいく予定をしているので、後何年ほどこれら98年産を大事に楽しめるかに関心がある。まだまだ酸味が新鮮味を与えて弱りを感じさせないので、五年ほどで飲み干せばよいかと考えている。

そこの地所や屋敷を「最もボルドーで美しいワイン地所」と讃えるのはヴォルテールだけでなく、作家ジュール・ルナールや私と全く同じようなことを綴っているのはシャルル・ボードレールである。かなり入れ込んだことを書いているのでシャトーから報酬が出ていたのだろう。私は偶々対応してくれた当主から、何も貰っていないので、これ以上書く必要はない。

二つ目は、オーメドックの普通のパサージュに3%の酸味があるプティ・ヴェルドーという品種が入っている。このクリュ・ブリュジョワークラスのワインは、フィルターをかけていないのか、何時ものようにデキャンターに移しても澱が甚だしい。今回もパーパーフィルターに通すのを忘れてもやもやしたのを味わった。本来は簡単に飲めるワインであろうが、透明さがないのがなによりもいけない。ヴィンテージによる差があまり大きく出ていないのも少々つまらない。98年は他のヴィンテージに比べて特に良くはなかった。経年変化もタンニンが弱くなればそれで飲み頃なのだろうが、それがなくなってしまうと弱弱しい感じになる。価格相当であろうか。

三つ目は、メドックのポーィヤックにある樽熟成無しに長期保存の瓶熟成を得意としているシャトーである。カベルネ・フランにヴェルドとメルベックを合わせて20%の比率となっている。なんと言ってもここの素晴らしいのは、その透明感であって、上の醸造所を考えるとどのようにフィルターをかけているのだろうかと不思議に思う。瓶の底に木っ端のように残る澱がまた嬉しい。長期保存というと、どちらかというとおとなしい静的なワインを想像するが、ここのものは試飲の時からまた経年しても何時までも活き活きとしている。流石に、98年は酸味が勝っているがアルコールと清楚なバランスが取れていて、まだまだ半世紀ほどおくべき他の更に良いヴィンテージを残して、これをちょびちょび開けて行くのも良いかもしれない。

通常は月曜日へと振り替えになる癖で、土曜日が休日だったことを忘れて買物が出来なかった。缶詰のまめをザウワークラウト入り肉のないハンガリー風チリコンカルネとして食事をしたので、ドイツのシュペートブルグンダーを開けた。2004年産のオェールベルクである。

2005年のものは大変アルコールがしっかりしていたのだが、夏の天候の悪かったこのヴィンテージのものはやはり弱く細い。試飲したときから分かっていたが、試しに購入してみた。やはり、酸と糖分のバランスを無理に取っているような按配で価格とは似合わず安物臭い。酸に甘みが浮いている。

これを繊細なシュペートブルグンダーと言ってしまえば、ドイツの赤ワインのレヴェルを下げることになるだろう。ドイツの赤ワインは、限られたヴィンテージの限られた商品を選ぶべきだろう。
by pfaelzerwein | 2008-11-03 04:26 | ワイン | Trackback
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