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懐かしい暴飲暴食の味覚

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耳の奥かとくとくする。暴飲暴食で血圧が上がったようだ。クリスマスの食事には何を開けるかに頭を痛めた先酔いもあったが、それに比べると随分とすっきりと酔えた。

イヴには、魚のテリ-ヌが三種類用意してあったので、フォルストの三大地所からのワインを混ぜたフォン・バッサ-マン醸造所のキュヴェー「プローブス」を添える。現時点では些か閉じてしまっていて、ステンレス醸造で残った薄い炭酸が気になるが、相手がウナギであろうとサケであろうと負けずに楽しめた。なによりもヴァイツェン麦のパンが美味くて食が進む。

クリスマス初日の食事は、初ものの丸ごとザウマーゲンの栗入りとあって、ワイン選びにも気合が入る。地元のリースリングから2005年産フォン・ブール醸造所イエズイーテンガルテンのグランクリュを試す。2005年産の大物リースリングはラインガウをはじめ夏以降いつも当たりが良くて、その構造的なワインを合わせてみたくなったのである。飲み頃のグランクリュの在庫は限られているので、あまりにも早すぎるかと悩んだが、その結果は予想以上であった。

売れ残りを購入したのは既に一年以上前であるが、試飲の評価とは全く矛盾しなかった。しかし、この醸造所の最近の変化からすると、この辺りでその始まりを試して先に期待したい気持ちもあり、その土壌の力強さと糖の高さから酸がまだ生きている内に開けてみたくなったのである。そしてなによりも地所の名前が良い。ノイシュタットの幾つかのイエズイーテン修道会のワイン地所であった。

温度は高めにコルクを抜くと少々元気過ぎる印象があり、グラスに何度かついでいる内に極小のグラスの底に張り付く気泡が確認出来た。ステンレス樽での熟成だろう。現在の商品は木樽となっているが新しいそれを購入する前の行程だろうか。

そのような感じで少しオイリーな杏風味も比較的早めに開き出して、デキャンタする必要は殆ど感じない。また、初めからほんの微かに熟成香を感じたのには驚いた。なんといっても予想に反して、重くないのである。重かったらグラスが進まずに困るなとの思いは危惧に終り、瓶の裏のアルコール度の表示を見て合点がいった。なんと13%を切って12.5%しかないのである。しかし試飲したときには酸が弱く早飲みである事には気がついていたが、その軽さには気がついていなかった。

いずれにしても執拗なイエズイーテン修道僧の攻撃をクリスマスから受けることもない、落ち着いて楽しめるワインで、あと数年もすれば完全に枯れてしまうのが予想出来て、本格的グランクリュというにはあまりにおとなし過ぎるリースリングである。

こうなれば、食前のレヴァーのテリーヌとの相性も完璧で、食事前にグラス二杯は平らげてしまった。そして食事にも栗の甘さを消す事もない。なるほど辛ささえなければ中華料理にも楽しめるだろう。しかしチーズ類には負けてしまいそうである。それ相応のミネラル味はあるのだが、この土壌の正確は纏まった味としての印象が強く嘗ては多くの甘口ワインとして醸造されていた事を髣髴させる。

個人的には、この土壌のリースリングを開けることはめったになく、嘗て飲んでいた甘口のイエズイーテンガルテンのリースリングそのものを思い出させた。当時は日本でスキヤキなどに、ブュルックリン・ヴォルフかバッサーマン・ヨルダンのそれを開けていたような気がする。今では敵のように醤油料理に文句を付けるが、何の事は無いその昔はそのようなリースリングの楽しみ方をしていたのだ。

栗の胃袋詰めも期待以上に素晴らしく、これほどに繊細な肉料理はこの世に存在し無いだろうと思わせる。なにも入っていないスタンダードなそれに比べるとなぜか豚の臭みが消えていて、これならばより広くの人に受け入れられるだろうと考える。ナイフを入れると、胃袋の皮だけが薄く剥がれていく。どうもその臭みと皮をどうしても食べさせようとしない作り方が微妙に関連しているようだ。今後、愛好家としてはその辺りに研究の余地がある。

繰り返すが、このワインとこの食事の質の高さは、なるほどフランスの一部には比較できるものがあったにしても世界で最も素晴らしい食であると確信するに十分だ。お蔭で自らの胃袋がザウマーゲン状態になって、飲み易いと思って殆ど開けてしまったワインの酸で胸焼けする。久しぶりで動けなくなるほど飲食した。懐かしい暴飲暴食の味覚_d0127795_3345298.jpg参照:
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by pfaelzerwein | 2008-12-26 03:35 | 料理 | Trackback
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