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シネマよりもテアタァーだー

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フランインスハイムを見学した際、芝居を観た。芝居と言っても町の壁の小さなカジノ塔の中にあるとても小さな「テアタァー」の一人芝居である。出し物は、ロンドンの貧しい12歳の少女が海賊として成功する子供向けのメルヘンであって、就学前の子供達に混じって時節柄大人達にも楽しめる内容であった。

二十人そこそこしか観れない、室内劇場と言うよりも家庭劇場の大きさなのだが、今回はマストあり船首ありのなかなか気の利いた具象的な舞台装置が良かった。芝居自体は、もぎり、バーテン、子守を旦那に任せた奥さんの芝居であるが、台詞は朗読のように十分聞かせ、客席との受け渡しも見事で、一時間ほどの長丁場を子供達に飽き指せない手腕は見事であった。

ベルリンの文化大臣などはPISA試験の低調を子供への劇場通いで補おうとしているが、就学前の英語や読み書き計算などのお稽古事よりもこうした劇場体験の方が、文化教養を養う価値はなるほど高い。子供達の想像力や台詞に秘められた力や、客観的にものを観る力は、こうした体験で言語的のみならず鍛えられるに違いない。なによりも劇場空間の体験は、現実や世界観への大きな鏡を与えられるようなもので、知的な創造力に必ず影響力を与える。俗に言われる情操教育などは、それと比べると意味不明の概念である。一体全体、ギリシャ的なカタリシスも存在しない所で、主観的などんな感情を高揚させようというのだ?

昨晩ベルリンでは、ドイツ映画大賞の授賞式があった。八部門でノミネートされていた映画「ジョン・ラーベ」が同じく四部門でノミネートされていたライヴァル作品「バーダーマインホーフ・コムプレクス」を完全打破して大賞を含む四部門のローラ像を勝ち得た。特に後者は、有名なドイツ赤軍RAFの二人の獄死者からの大変興味あるタイトルに関わらず、余程稚拙な映画だったのだろうかと想像させる。

兎に角、ジョン・ラーベを演じたウルリッヒ・トュクールは主演男優賞を授与され、「中華料理から護ってくれた奥さん」に謝意を述べたとある。また映像賞、衣装賞が授与され、大賞受賞に際して、「我々はこの映画のために長く戦って、限りなく嬉しい」と監督のフローリアン・ガレンベルガーに代わってプロデューサーのミーシャ・ホフマンは語ったようだ。

賞金の二百五十万ユーロはどこに行くのかは知れないが、現在までのロードショー三週間ほどでたった僅か八万人の入場者数というあまりにも惨澹たる興行成績の慰めになるだろうか。どうも、「善いナチ」と言うあまりにも逆説的で皮肉に満ちた映像が嫌われているようである。ジーメンス社はアンゲラ・メルケル首相に対中関係の見直しを書面にて要請したというが、中共への経済重視の賄賂と汚職が蔓延る好い加減な対応は有権者が許すまい。

笑わせる大作パロディー映画「ノルトヴァント」がコリヤ・ブラントのカメラと、あの笑わせてくれる効果音で二賞を獲得しているのはこれまたドイツ映画名物のお笑いか。



参照:
フラインツハイムを散策する 2009-04-20 | アウトドーア・環境
未だ覚醒しない兄弟との確執 2009-04-19 | 歴史・時事
独・ユダヤ・シナ・日本の愛憎 2009-04-14 | 歴史・時事
「ドイツ問題」の追憶の日々 2009-04-13 | 歴史・時事
情報の洪水を汲み尽くす阿呆 2009-04-12 | マスメディア批評
知性に劣る民を卑下する美徳 2009-04-06 | マスメディア批評
素朴さ炸裂のトムちゃん 2009-01-25 | マスメディア批評
情報巡廻で歴史化不覚 2008-10-27 | アウトドーア・環境
世界を雪崩で洗い落とす 2008-10-25 | マスメディア批評
引き出しに閉じる構造 2007-01-11 | 文学・思想
ある靴職人の殺人事件 2006-01-04 | 文学・思想
開かれた平凡な日常に 2005-12-30 | 文学・思想
「南京事件を描いた映画「ジョン・ラーベ」の日本公開を求める署名 」 
by pfaelzerwein | 2009-04-26 00:00 | マスメディア批評 | Trackback
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