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安全機構を一望する間隔

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日曜日のパンを取りに行って、昨日痛めた左膝と左肘の関節を歩いて直そうと思った。道に迷って三時間以上も歩いてしまった。朝飯前にこなすには12キロ越えは長すぎる距離である。

歩きながら前日の反省や様々な事を考えていた。最も興味深く思っている事は安全のシステム構成についてであり、主に岩場における自己確保とパートナーつまりザイルシャフトの安全である。

顕著な例として挙げられるのは南プファルツの一般ルートと呼ばれる多くの岩峰において取られているクラシックなルートにおける、茸の傘の下のような天井の低い回廊の通過横へと伸ばされる時の確保支点の設定であろうか。

人は上へ上へと登って行く動作にはそれほど恐怖感を感じないのだが、そうした屋根の下の巾二十センチから五十センチほどの外へ傾いた回廊に両膝をついたり片足を掛けたりして進むときの恐怖心はかなりのものである。要するに姿勢が這い這いをする赤ん坊のようになかなか安定しないのである。だからどうしてもそこに出来るだけフレンズなどの噛ませものを入れて落ちる距離や全体の落下の危険性を下げるように努力する。

そうした状況に典型的に表れるのが自分自身の落下を短くしようとする意識と全体の安全性を高めようとする作業との微妙な差異ではなかろうか。最終的に恐怖心から導き出される前者よりも致命的な事故となりかねない後者が最も重要視されるべきであるのは言うまでもない。

そのような基本は承知していてもその場その場の状況に応じて様々な対応の仕方があり、その中からベストを確実に選択して行くには全体を見渡す事の出来る冷静な判断力が必要になる。心理的肉体的に圧迫されて居る状態でそれを確実にこなして行くのは経験とも言えるが、一種の危機管理で合理的に解決して行くしかないようである。

昨日は現地でプフェルツァー・クライマー連合の九十年祭が開かれていて我々の一人がそれに合わせて今回は企画したようである。知らぬ間に此方も顔見知りが多く先方から挨拶されることがあって驚く。事故の問題などを語っていたが、「重力に逆らうスポーツだから」という意見には、町医者は「それはないだろう」と零していた。彼も南シュヴァルツヴァルト出身でアルペンスキーの選手をやっていたと初めて聞いた。なるほど運動能力が高い訳である。

アルペンクライミングに比べてスポーツクライミングは、前者は致命傷が多いのに対して後者は一生涯の不自由となる事故が多いようである。確保体系の違いやザイルの長さや太さについても様々であり、それはそれでなかなか複雑である。
by pfaelzerwein | 2009-07-06 00:13 | アウトドーア・環境 | Trackback
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